(其の一の続き)
●それでも、当った場合・・・
さて、前回は「ファラオの復讐 その予防法」だった。
私が経験した限り、暴飲暴食を避け、冷たい水をがぶ飲みしない、としていると、
かなりの確率で「当り率」は下がる。
実際、私の友人など、言うこと聞いてるうちは大丈夫だったのに、
ある日ルクソール西岸であまりの炎天下に耐えかねて、止める間もなく
「冷たいミネラルウォーター、イッキ飲み」に走り、結果、その晩は一晩「P状態」
で泣き暮らしたことがある。
この場合は、特に高熱を発したり吐いたりしていたわけではなかったので、夕食は雀
の涙程に押さえ込んで(本人食欲もなかったし)、早く寝てもらったら翌日には回復し
ていた。
勿論「シャイ・ビ・ナーナー(ミントティー)」をしっかり飲んでもらった。
軽い不調は、これで何とかなる。
と、いうか、何とかなってほっとした。
用心していても、やっぱり当るときは当る。
そういう場合、恨みがましく思っても仕方がないので「ファラオに愛された証」
と考えれば、少しは気がラクになろうか?
さて、ここで一番いけないのは、素人療法と痩せ我慢である。
(注:上記の友人の話で、ワタシがやったこともまあ「素人療法」の範疇だけれど、とりあえず一晩様子をみて、状態が悪くなるようだったらドクター、と思っていたのだ)。
どこかのSNSなんぞみていると
「正露丸を倍量飲んで、日本の下痢止めと風邪薬を飲めば治る」
などと、想像するだに恐ろしいことが書き込んであったりして、なにか書き込んで
注意喚起すべきかどうか、結構悩むこともある。
これなど、空恐ろしいことに、某添乗員さんの「知恵」らしいのだ・・・ヤメテクレ!
正露丸は水当たりくらいにしかきかない。
倍量なんぞ飲むと、胃が荒れて余計辛いだけだ。
また、あまりの辛さに手持ちの止寫薬を服用して、下痢と吐き気を止めようとするの
も危険だ。
これはお医者さんに聞いた話なのだが、下痢や嘔吐というのは、体内に入ったバイキ
ンなりウィルスなりの「異物」を、生理的に肉体が追い出そうとしている状況なので、
素人判断で止めると、出て行くべきものが体内にとどまることになるから、余計ひど
いことになりかねない。
発熱も同じで、体内の抵抗勢力と侵略軍が熱く戦っている証拠、なのである。
軍事情報っぽくいうと(?)。
そこに「解熱鎮痛剤」など送り込むと、どっかの先進国の外部勢力が余計な介入をしたように、戦況を泥沼化させることがある。
この熱を、どのタイミングでどのように下げるかは、素人が判断しないほうがいい。
風邪薬???
日本で「こりゃ流感だ〜」なんてとき、「風邪薬」で治そうとしますかね?
と私は聞きたい。
まったく、どこの誰がそういう何の根拠もない「素人療法」を得意げに吹聴するのだ
ろうか。
SNSのコメントに思いっきり「バカタレ!」と書き殴りたい衝動と戦うのに疲れてきたので、最近はあまりみないようにしているのだけれど。
尚、一点重要なのは「水分補給」だ。
上下ともシンガポールのマーライオン化している(おお、失礼)ので、当然脱水症状になる。
もちろん「冷えたミネラルウォーター」などでないのは当然で(もう目の仇にしてい
るのだ)、理想的には「ぬるいお湯」。
もし手持ちで「ポカリスウェット」の類などあれば、吸収がいいので
「冷やさないで」飲む。
こういうときに、日本からこっそりスーツケースに忍ばせてきたティーバッグの日本
茶の類は実にありがたい。若干でも食欲があるなら「インスタント味噌汁」でもいい。
あともうひとつ、こういう状況下「熱いお湯がほしい」と思ったら、
日本人が常駐しているような「高級ホテル」であれば、ルームサービスに電話をかけて
"Boiled water, please!(ボイルド・ウォーター・プリーズ!)"
と各自申し述べていただきたい。
日本人のスタッフが対応してくれるケースも勿論あろうが、ゲストはあなた一人では
ない。
だから、他のことで駆けずり回っている場合など、逆に対応が遅れかねない。
ルームサービスに直接頼むほうが、間違いなく早い。
ホントウです・・・ホントウなんです・・・(経験者、談)。
●ドクターを呼ぼう
そういうわけで、できれば旅行保険に入っておいて、ホテルなどでドクターを呼ぼう。
旅行者のこの類の症状は、本人まことに深刻ながら、申し訳ないことに現地関係者は
「慣れっこ」だ。
カイロのホテル時代、必ず発生する会話の定形があった。
「お薬だけあればいいですから」
「いえ、現地のお薬を中途半端に飲むのは危険ですから、お医者さんを呼びましょう」
「お医者さんを呼ぶほどではないですから」
「こちらのお薬が必要なほどの状態でしたら、お医者さんに来ていただくのが一番です」
「・・・でも・・・」
「30分以内にドクターがお部屋に参りますので、お手伝いがいるようでしたらお電話
下さい」
で、ヨロシクドーゾ、なんていってドクターを呼んでいたものだ。
逆のパターンを日本のホテルでも経験したし(ゲストはエジプト人。第33話参照)、心情的にはよく理解できる。部屋までドクター往診というのは、ものすごい大事のようで気が引けるのである。
でも、旅行保険に入っておけば、薬代まで申請すれば戻ってくるのだから、そのほう
が得だ。
そして、大事なのは「ん??!!」と来た初期に押さえ込むことだ。
我慢強く日本から持参の薬を飲み続けて、状態を悪化させたゲストを何人見たかわか
らない。
エジプトのドクター、と言われると、申し訳ないけれど正直なところ「大丈夫なの
か?」と思いたくなるが「ファラオ関係」に関してはプロだ。
「日本に帰れば、いいお医者さんが・・・」というのもケース・バイ・ケースで、とりあえず「きちんと信頼できるドクター」を呼んでもらって、一応診察を受けることをお勧めする。
別に脅かそうというつもりはないが、カイロのドクターなら即座にわかる単純な病状
が、日本のドクターには「得体の知れぬ奇病」であったりするケース、なくはないの
である。
これは元在住者のケースだが、カイロで特殊な食中毒を起こした人が、丁度帰国直前で「日本に帰ってちゃんと診てもらうから」と帰国して、病院に即駆け込んだが原因不明。
検査検査でたらい回しにされているうちに、不幸にも亡くなられた、という話もあった。
カイロだったら「よくある病気」で、即対応してもらえた状態だったという。
これは極端に特殊な例ではあるが、意外に「現地の病は現地の医者が強い」というのは、半分くらいは真実だとおもう。
少なくとも、エジプトでは。
勿論、病状にもよるので100%とは言わないが、少なくとも日本の医療は万能ではない
し、エジプトにも信頼できるドクターはいる。
まあ、ろくでもないのも勿論いる。
でも、そういう「ヤブ」は日本にもいる。
だから、その辺を言い出したらきりがないのではある。
とにかく旅行者と病気というのは、彼の地では切っても切れない縁深いモノなので、
安宿から高級ホテルまで、とりあえずドクターは呼んでもらえる。
その辺は、下手をすると日本のホテルよりしっかりしているかもしれない。
ただし、各個人差のあることなので、健康上の不安がある方は、あくまで念のため、
出発前に主治医に相談をして、そういう場合の対応策を聞いておくとよいかと思う。
そして、どうせドクターにきてもらうなら早いほうがいい。
熱がでた、吐いた、という段階で、変に手持ちの薬でごまかさずにお医者を呼ぶべし。
我慢して長引かせるだけ、体は消耗する。
尚、ホテルによっては24時間呼び出し体制のドクターがいる。
これが、日本の高級ホテルだと「救急車対応」になるときいて、たまげたことがある。
この辺は、エジプトのほうが濃やかだ。
●水よりからだにいい飲み物
だんだん説教臭さがエスカレートして、書いてる本人疲れてきたから、少しは楽しい
話。
「現地のお飲み物」
けっこうお腹によい飲みものがあるのだ。
お試しあれ。
「シャイ・ビ・ナーナー」:ミントティー
何度かでてきたが、消化整腸作用がある。
ビュッフェでつい食べ過ぎたかなあ、などという時にも、胃がさっぱりしてよい。
苦手な方も、薬だと思ってお飲みください、是非・・・。
「カルカデ」:ハイビスカスティー
現地では、冷やして甘くして飲む。
ジュースのようだが、実はお茶なのだ。
赤い色をしていて、見た目にもキレイだ。
高血圧にきく。体の熱を取る作用があり、ビタミン豊富。貧血にもよい。
現地のものというのは、実にうまい具合にできている。
尚、日本でも最近よく見かけるようになったが、非常に高い。
エジプトなら高級スーパーマーケットなどで買っても、一キロ1000円もしないので、
お土産にもよいかもしれない。
「アシル・リモーン」:レモンジュース
エジプトのレモンは、どちらかというとライムに近い。
これも生のレモンを山ほど絞って、甘くして飲むので、ビタミン補給や体の熱さましに
よい。
食後のコーヒー(いわゆる「トルココーヒー」と言われているもの)も、
現地風の濃厚なものは、アニスやカルダモンなどが入っていて、消化促進や解熱によい。
クセはあるが、是非おためしあれ。
あれだけ飲むと「ナンダこりゃ??」と思うが、現地の食事のあとにいただくと、
なるほど胃がさっぱりする。
郷にいれば、とはよくいったものだなあと、こういう飲みものの効用薬効などをきくたび、つくづく思う。
(2006年9月8日配信)