(前編のつづき)
●自己管理について
気がついたら二ヶ月も連載をサボっていた私に、自己管理のナンタルヤを言われるなど、
読者の皆様にしてみれば噴飯ものであろうが、耐えてこらえて聞いていただきたい。
結局のところ、エジプトなど中東に限れば、旅行中に体調を崩す原因は以下の三つ。
1.寝不足
2.過労
3.暴飲暴食
単純な話だ。
以下、解説。
1.寝不足
大人が一週間も海外に出ようと思ったら、仕事を休むことになる。
忙殺されて寝不足になっているのが普通だろう、と思う。
専業主婦は関係ない?!
とんでもない、主婦だって毎日の仕事プラス留守宅の手配などがあるのだ。
買い物、お土産、挨拶などなど、普段の仕事に乗っかってくる仕事で忙しいのだ。
経験的に、ツアーで最初にダウンするのは若い独身者が多い。
でもこれは「最近の若いもんはだらしない」からでは必ずしもなくて、
一人で全部抱え込んでいるからではないか、と思うことがある。
そういうわけで「疲労との戦い」は、実は旅立つ前からはじまっているのだ。
出発前夜は荷造りに追われ、あるいは興奮してほとんど寝つかれず、挙句に朝が極端に早かったりする。
飛行機の中で寝て行けばいい?
ここでとれるのはあくまで「仮眠」であって、しっかり横になって眠れるわけではない。
疲れは、取れるどころか増しているのが普通だ。
2.過労
1と同じ話だが、とにかく「休暇だから眠れる」という信仰に近い感覚をもって、
皆様それぞれ、最寄の国際空港に向かう。
特に旅程が決まってなければ、行った先の最初の宿から一歩も出ないで、ぐっすり眠るというのもアリだろう。
贅沢だけど、場合によってはありうると思う。
私自身も「休暇旅行=場所を変えた健康的熟睡環境での生活」だった時期がある。
だって「バケーション」だ「バカンス」というのは、本来「空にする」という言葉が
元になっているのだ。まあ、空っぽになる手段は人それぞれ、ということだけれど。
さて、そういうワガママな人種はおいといて、旅程の決まったパッケージツアーだと、
添乗員さんの申し述べた「明日の旅程」は、絶対なのである。
「それでは皆様、明日の行程をご説明申し上げます。
モーニングコール 2時半
お荷物を廊下に3時までに出していただきまして、ご朝食。
チェックアウトを済ませていただいて、ロビー集合は3時半、出発4時と・・・」
カイロから、ルクソール、アスワンなどの上エジプト方面に移動するときなど、
これが普通だ。
本当は、旅程のゆったりした、詰め込み型でないツアーで行くのが理想的だけれど、
なかなかそうもいかない。
ほんの5日か6日の間に、強行軍でエジプトの名所旧跡を訪ねる旅が始まる。
そして、疲労はますます重なって行くのである。
3.暴飲某食
かくのごとく、パンチドランカー状態の老若男女が遭遇するのが、まずは「飲みもの」、
次に「食べもの」だ。
そして実は、一番ダメージが大きいのが「飲みもの」なのである。
でもまず、食べものについて。
エジプトに限ると、食事はビュッフェが中心になる。
地方では、朝、昼、夜と続くこともある。
イヤミに聞こえると悲しいのだけれど、日本人の行動をみていて「やれやれ」とおもうのが、ビュッフェを皆でいただくときだ。
日本では「バイキング」、またはもっと直裁に「食べ放題」と訳されている。
そこに歪みが生まれる。
私も実は深層意識の中ではそうなのだけど
「ビュッフェ=バイキング=食べ放題」
となって、とにかく片っ端からイッテしまえ・・・となりがちなのだ。
しかし、エジプト現地のビュッフェの料理というものは、例え朝食でもけっこう脂を
使っている。
ランチはビュッフェか定食かわからないけど、きっちり食べる。
そして、ディナーの豪華なビュッフェに突入。
ここで考えてみてほしい。
あなたは、日本にいるときに、一日三食お腹一杯食べていますか?
しかも、中東や欧米に関しては、一見さっぱり見えても相当な油脂類が使われている。
ホテル勤務当時、某高級ホテルの清潔にして整然としたキッチンで「ひぇぇ〜!」と
たまげるほどの油脂が投入される現場を、目の当たりにしてきたから間違いない。
それだけ食べれば、ただでさえ疲れきった睡眠不足の体に「胃もたれ」「消化不良」がついてくるのは、当然のことではなかろうか?
このようなビュッフェでの過食を避けるには、時間さえ許されるなら、いい方法がある。
レストランに着いたらまず、どんな料理が出ているのか、まず一回り見て歩くのだ。
そして、何をどう食べようか考える。
こうしているうちに、脊髄反射的に熱く燃え上がった「行け、食べ放題だ!!」という一時的興奮状態が、少しはおさまる。そうです、皆さん、冷静に・・・。
見慣れない料理が多い場合は、あまり量をとり過ぎないこと。
食べてみて、もっと食べてみたいと思ったらまた取りに行けばよいのだ。
そうして往復するうちに、意識は「きちんと食べよう」という方向に向くものだ。
そのほうが楽しいし、実は格好良くもある。
尚、これはマナー違反だけれど、取ってきたものが口にあわなかったり、どうにも
食べきれないな、と思ったとき、潔く残すのが明日の自分のためになる。
海外旅行の場合、どうしても日常のバランス感覚を失いがちだし、
食べたらイメージが違っていた、ということも多い。
本来ビュッフェで、取ってきたものの食べ残しというのは、あまり格好のよいものではないのだが、無理をして消化不良を起こすくらいならきっぱり残すべし。
ただし、時間が限られるランチなどの場合は、この限りではない。
状況に合わせながらも「腹八分目」を必ず心の隅におかれたい。
●飲みものについて。
現地で暮らしていれば、日本より時期によっては快適であろうとも、初めて来た旅行者にとっては慣れない環境だ。
そこで暑いと、日本人の場合、特に目だってカチンコチンに冷えたものを飲む傾向がある。
氷がいけない、というのではない。
場合によってはそういうケースもあろうが、氷よりもっといけないのは、
日本人の「カチンコチンヒヤヒヤ執着癖」とでもいうべき習性だ。
あなたたち、お爺さんやお婆さんに言われませんでしたか?
夏場は暑い時こそ熱いお茶を飲み・・・あーーーそこのおじいさんっ!
凍ったミネラルウォーターのイッキ飲みは、やーめーーーーてーーーーー!!!
日本にいるときも、暑い時に冷たいものばかり飲んでいれば胃腸が変になる。
それが、エジプトのように、エキセントリックなほど異国情緒あふれる土地で、
過労と寝不足を抱えて慣れないものを食べているのだ。
挙句に、寝不足、過労、過食・・・ときて、ヘタヘタに弱っている胃腸の上に、
冷たい飲みものをドバドバぶっかけたら、弱った体が余計にへたるのは理の当然。
そうおもいませんか?
ただしエジプトでは、特に暑い時期、水分補給は必須のものだ。
だから、常温のものを常備して、チビチビ飲むのが正解。
冷たいものしかなければ、噛むようにゆっくり飲んでほしい。
それだけで、相当にファラオさまはお喜びくださるのだ。
本当です。
そして、一度口をつけたボトルの賞味期限は一日。
バクテリアが繁殖するからだ。
夜余ったら、髪を洗うときに頭からドバドバかけてリンスするとか、
歯磨きや洗眼に使うとか、あるいは捨ててしまうとか、手段は色々だが、
「その日のうちの使いきり」をオススメする。
最後に、もう一度、大きな声で繰り返したい!
「ビュッフェの食べ過ぎに注意!」
「冷たい水のいっき飲みはやめよう!」
(この項、次回に続く)