2006年06月18日

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カイロ住宅事情 其の一 〜シンドラーのリフト(?)〜 【第58話】後編

前編より続く)

●カイロで高層階に住む

高所が苦手、と言いながら、住むところに関しては、あまり深く考えたことは
なかった。
知人宅が高層ならば「いやあ眺めがいいですね」と、単純に羨ましがって
いたくらいだ(でも、本能的に避けるのだか、バルコニーにはまず出ない)。

結婚してイスタンブルからカイロに移ってから半年ほど後、諸般の事情で
引越しをすることになった。
そうしたら、ビルはボロイが場所は便利で、内装も家具もステキな物件が
見つかった。
あまり深く考えなかったのだが、15階にあって、窓からナイル川が一望できる。

気に入ったので、猫らを連れて引っ越してきた。

しかし引越し後、どうもなんだか体調がスッキリしなくなったのである。
しかも、隣近所によれば、引っ越すまではわりあいとまともに動いていたという
エレベーターがしょっちゅう不調を起こす。

深夜すぎまで仕事で駆け回って、やっと我が家にタッチダウン・・・と思ったら、
門番がひどく情けない顔で「マダーム、エレベーター故障だ」と告げる。
これは、かなり応える。
チップを弾んで門番に書類かばんなどを持たせて、せめて手ぶらにできるとはいえ
15階までハイヒールのまま這い上がるのは、いかに足腰にはちょっと自信のある
ホテルマンのワタシにも、結構「苦行」な深夜二時、だった。

15階で降りようとした時、いきなり10センチばかりぐっと沈んだこともあった。
気絶しそうになった。

挙句、旧式のエアコンの室外機(下にはなにもなくて、ドカンと外に箱型に
突き出ている)の上で、猫らがよく昼寝をしているのを発見してしまった。

見た時は、冗談抜きで心臓が止まりそうになった。
長男タケゾウなんぞは、寝ぼけてベッドから落っこちたりするような、
超オマヌケくんなのだ。
呼び戻すにも及び腰で、えさで釣って呼び戻し、その後その窓は「開かずの窓」
とした。
猫に「高所恐怖症」はないらしい。


●シンドラーのリフト

「もう引っ越そう!」と、夫と話し合って家捜しを始めた頃の、とある朝まだき、
カイロで結構強い地震が起きた。

本当に、車酔いしそうな揺れが来た。

「グーラグーラグーラゴォン」と、夫。
「・・・とりあえず、今はここにいるのが安全だよね・・・」
「そうだなあ、でもさ・・・」

二人同時に言った「早く引っ越そう!」

余震というよりは「ビルの揺れ残り」がおさまるまで、あと数分かかった。
その間に、ワタシはぐっすり寝てしまったそうだ(とても疲れていたのだ)。
外では、一度大地震で怖い思いをした隣近所の大騒ぎが、遠く聞こえていた。

その後の物件探しで、階数をよく確かめないで見に行ったところは「23階」。
もう、窓から外を見るだけで具合が悪くなったものだ。

その時、大家が声を大にして強調したのは、
「ここのリフト(エレベーター)はスイスのシンドラー社製だ。
だから、問題ない。心配ない。大丈夫だ!!」

タイトルのわりにオチがこじんまりして申し訳ないが、今回の事態を聞いて、
なんだか複雑な心境で「あのときのこと」を思い出した次第。

尚、その後、ナイル川沿いの建物の三階に越した。
バルコニーで爽やかな朝の川風に吹かれていると、
これぞ贅沢、としみじみ思ったものである。

ついでに書き添えると、諸々の体の不調は解消し、どうも妙に落ち着きの
なかった猫らものんきな顔つきになった。

そんなこんなで、今回は思い出話だが、
次回はもうちょっと現実的な住環境のお話でも・・・インシャアッラー。

(2006年6月16日配信)



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