最寄駅:竹橋 / 神保町 / 小川町 / 淡路町 / 新御茶ノ水
料理:エスニック一般
採点:★★★★☆
一人当たりの支払額(税込み):3,000円〜5,000円
用途:夕食
これこれ、書く場所を間違えているのじゃないの。
ここは『中東ぶらぶら』だ。
『横浜ほにゃらら』ではなくて・・・というのはわかっているが、
本人もどっちにしようか迷った結果、こちらに上げようと思った。
まあ、やっぱり中東の料理などの話だから『ぶらぶら』だろうなあ、と。
カンダハルにアフガニスタン料理を食べに行く、というと物騒な感じだが、
行く先は語尾の「ハル」ぬきで「神田」だから平和なものだ。
電車でいけるし、命もかからん。
初めて食べる料理だから、興味津々。
中東ジャーナリズム界のパパイヤ鈴木こと金子貴一が「取材」に誘ってくれたのだ。
何でもスカパーの『フーディーズ』なる番組で朝4時から一時間、アフガニスタン料理の話をすることになったとやら。
ほぉ、テレビの取材…ということは何でも無料食い放題!
と、ニコニコしながら出かけた私は甘かった。
この妙に清貧なジャーナリストは「自費取材」の経費をワリカン効果で削減するために私を誘ったのである。狡猾なのか真面目で誠意があるのか、境目のよくわからんところは実にエジプト人らしい。
いや、本人は日本人ではあるのだけれど、なぜか20年ほど前にエジプト人に生まれ変わってしまった珍種なのだ。
さて『神田カブール食堂』。

看板がいい味を出している。
在日15年のユノスさんがサービスを、奥さんがお料理を担当。
イスラム教徒がきても問題ないように、料理はすべて「ハラール」。
つまり、イスラームの教義にのっとって処理された肉しか使っていない。
アフガニスタンという国は、イラン、パキスタンに挟まれて、中央アジア各国とも国境を接し、欧米の過去の政治的な思惑で、盲腸のような領土が無理やり中国ともくっついている。
だから、基本はアラブ料理だが、周辺各国の影響は強い。
アラブ料理というと、どれも似たようなものだというイメージがあるかもしれないけれど、意外に各国各様。基本はレバノンとトルコで、この両国の料理が双璧だ。
一方でアフガニスタンの場合、いまひとつ「美食の国」というイメージからは遠い。
行ったことがないからなんともいえないが、現地にいた人の話など聞いても、アラブ圏でお料理対決のリーグ戦をやったら、エジプトともども真っ先に予選落ちしそうな感じがする。
以下、お料理の紹介。
珍しく真面目に写真をとってきた。
普通は食べるのが先で、気がついたころにはもう皿はカラ、というパターンだが、
何しろ「ジャーナリストの取材」なので、お料理を前に「お預けタイム(写真撮影)」があったのだ。
だから、黙ってみているのも馬鹿馬鹿しいので、写真を撮った。
いつもの携帯で撮ったやつではないので、クリックすると拡大します。
拡大して写真の質が上がるか、というとそうでもないですが、まあご参考までに。

パラウという、いわゆるピラフが(ちなみにピラフの語源はトルコのpilav)家庭的な味で美味しい。パラウはインディカ米で、これはインド・パキスタン風。
ナンやパラウを添えて食べる。ここではナンは「ウズベキスタン風」と普通のインド風の二種類あった。実はナンというのは、インドあたりではなくてアフガニスタンが発祥なのだそうだ。

中央上から、ヨーグルト、ナスの煮込み、レンズマメのカレー、パラウ。

ほうれん草の煮込み。アラブ圏ではよく見かける料理だ。

麦のスープ(写真右側)は中央アジア風な味。酸味があって、さっぱりしている。
中央はナスのトマト煮込みにヨーグルトをかけたもの。
トマトが基本、というあたり、アラブ料理らしい。
ヨーグルトをなんにでもかけるのは、トルコやイランでも同じだが、これは中央アジアの影響とのこと。
余談だが、頻度や密度は薄まるが、湾岸諸国くらいまではヨーグルトが結構出てくる。基本的に遊牧民のものなのかなあ、などと考える。
エジプトにくるとほとんど見かけない。
もちろん食べることは食べるが、基本調味料、というイメージは消える。

野菜や肉を煮込んで鍋のまま出す「カライイ」は、いかにもアラブの家庭料理風で懐かしい味。卵が一個割落とされていて、エジプトの「シャクシューカ」という料理になんだか似ている。

その他アラブ県の料理と
ちょっと違うのは、カレーがあることだろう。これはレンズマメのカレー。

特に豆のカレーが種類豊富。ただし、インドやパキスタンのような強烈さはなく、マイルドだ。アラブ料理は一般に、辛味であれ香味であれ、あまり極端にスパイシーにしないから、日本人の口には合いやすい。
でも、いわゆるエスニックな刺激を求める人には物足りないかもしれない。
そして、これは明らかに中央アジア系の「乳酒」がある。
日本で作っているのだそうだ。
乳を発酵させた酒で、好き嫌いは分かれそう。
韓国のマッコリを、もっとこってり酸っぱくしたような感じだろうか?
え、イスラム教徒は禁酒のはず?
いやまあ、そうだけど、人類の欲望ってどこも結局同じなんですよ・・・。
食後に緑茶にカルダモンを入れたものを飲む。
中国とアラブやインドの折衷だなあ、と面白い。
全体に味付けは家庭的で素朴だ。
冒頭にも書いたが、レバノンやトルコと違って本来が美食の国というわけではないので、極端に変わったものが出てこない代わり、目からうろこが落ちるような美食との遭遇はない。もともとそういうシンプルな料理なのだと思う。
味付けは全体に塩が強めだが、ユノスさんによると、それがアフガニスタン料理の特徴だとか。
店内はテーブル席がいくつかと、現地風に床に座って食べる席があって、こじんまりとまとまった雰囲気でリラックスできる。
メニューにない料理も、事前に相談すれば作ってもらえる。
「マントゥ」というアイテムを金子貴一の資料から発見して、きゃいきゃいと騒いだが「予約してもらえれば…」ということだった。
うう、これはぜひとも食べてみたい。
値段は良心的。
私は個人的に塩気の強いものが苦手なので、ちょっと塩辛いなあとは思ったが、
一般にはOKな範疇だろう。
しかし、香辛料などの違いは多少あれど、様々な野菜を使う割りにどれもトマト味でがっちり煮込むあたり、なんだかエジプト料理のようで、清貧なるジャーナリストと「おお、なんか懐かしいね」と、二人でちょっとノスタルジーに浸った次第である。