比較的近隣に一軒トルコ料理屋がある。
以前一度行って、悪くないなと思っていた。
そしてある日、強烈にマントゥが食べたくなった。
電話をしたら「あったりなかったりだけれど、今夜はある」との由。
夕刻5時の開店と同時に駆け込んだ。
「こんばんは」とトルコ語で挨拶したら、店主が「マントゥだね」という。
ついでにラクを一杯に、ほうれん草をヨーグルトとにんにくで合えたサラダを
もらう。
前回も思ったけれど、ここの前菜類は変に日本人向けに妥協して、無味無臭に
なっていない。
ガツンとにんにくが利いていてうまい。
「おいしいね、サラダ」といったら、
「でも、この季節の日本のほうれん草は甘すぎる。
夏はあるんだけど、冬はみんなあまい。探すけどない」と、店主が嘆く。
確かに、トルコのほうれん草は、結構しっかりした灰汁抜きが必要だった。
そして、マントゥ登場。
ヨーグルトに覆われた餃子のようなものに食らいつこうとしたら、
「ソースがまだだ。待ちなさい」といわれる。
ソース登場。マントゥのソースらしからぬ、妙にスパイシーな香りが漂う。
カレーっぽい、と思ったら、クミンだった。
不思議そうに鼻をヒクヒクとさせて、さらに不思議そうな顔つきでマントゥを
つつく私に、店主はどうも不満そうだった。
「懐かしいだろ。どうだ?!」
こういうときの返事は、本当に難しいけど、思い切っていった。
「こういうソースって、おいしいけど初めてだなあ・・・」
「じゃあ、どういうのを食べてたんだ?
あ〜〜、トマトソース入れて焼いたやつだろう?」
「それは知ってる。違う種類です」
「じゃあ、なんだい?」
「ヨーグルトと赤っぽいソースがちょっとかかったやつ!」
「は、なんだそりゃ? そんなのきいたこともないぞ。」
「だって『カイセリ・マントゥ』って、有名じゃないの!」
そこで、隣の席に座って話をきいていた別のトルコ人(お友達)が、
ぶっとふきだした。
「そういうマントゥは、あるよ、兄貴」
「なんだそりゃ」
「俺の田舎の辺はそういうやつだよ」
その「お友達」は、カッパドキアあたりの出身なのだ。
「兄貴」のほうは、地中海沿いのかなりシリア寄りらしい。
笑い出した彼が説明してくれたところによると、マントゥというのは本当に
地方によって違うそうで、まあ日本のラーメンみたいね、と。
なるほどね。
それにつけても、あの昔住んでいた家の近くの「カイセリ・マントゥ」が
食べたい!!