
エジプトでは、暑くなってくると街角にサボテンの実を山積みにしたリアカーが現れる。
実はトゲだらけなので、軍手をしたおじさんがナイフで皮を剥いてくれるのを、大抵その場でワシワシ食べてしまっていた。
ナイフなどを丁寧に洗っているのを見たことはないし、炎天下に同じナイフで皮剥きをしているから、本当のところ衛生的に余りほめられたものではない。
でも、ついつい手がでる。
無花果とびわを併せた様な味で、汁気たっぷり。美味なのだ。
家の近くなら、皮だけ剥いたものを買ってきて、
洗って冷蔵庫で冷やしたりもしたが、
やっぱり不衛生ながらも「買い食い」がおいしかったのは不思議なものだ。
エジプト方言のアラビア語で「ティーン・ショーキ」という。
ティーンは無花果、ショーキは棘。
だから『棘無花果』と呼ばれているわけだ。
なるほどね。
夏の風物詩、と言ったら美しすぎるが、毎年街角でこれをみかける度に「夏が来たな」と思い、いつの間にかいなくなると涼しくなり、を繰り返していた。

一週間夏休みを過ごした、南伊豆の海の家の軒先にこれが生えていたからだ。
正確には『ウチワサボテン』という。
日本でも南九州の海沿いでみかけたからあるのは知っていたが、伊豆にもあるのには驚いた。
原産はメキシコだそうだ。
結構きれいな花が咲くので、観賞用にも出回っているらしい。

これがキーウィやアボカドくらいの大きさに育てば食べられそうだが、どうなのだろう?
調べたが、日本ではあまり食用にはしないらしい。
おいしいのになあ・・・日本だと、気候が違うから甘くならないの・・・?。
あー、ティーン・ショーキ!と、まだ直径3cmの実を眺めては、ちょっともいで、味見したい衝動と戦った一週間ではあった。
もし近隣で自生している地域の人がいたら、試してみてください。
なお、棘だらけなので、決して素手で触らないよう気をつけて。
ついでだが『サボテン』は漢字で『仙人掌』と書くそうだ。
なんだか風情がありますね。棘だらけとはいえ。