2005年06月27日

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【第16話】 カイロ交通事情 〜其の三〜

『それでも気分よくすごすために〜タクシーの選び方と乗り方、そして降り方〜』


●許すか怒るか、はたまた諦めるか、それとも・・・

前号では、
「怒るより許せ」「ぼられると思うより、施しをしていると思え」などと、
解脱した聖人のようなことを書いてしまったが、
実はそれが一番できないのがワタクシ自身でもある。
長く住んでみた結論としては、結局上記に行き着くわけだが、
そこにたどりつくまでに5年以上かかっている。

でも、結局のところ、
やむにやまれぬ事情でカイロに住む羽目に落ちた人は別として、
好き好んでエジプトにきたのならば、現地のやり方に不平不満ばかり並べても
自分が不愉快になるだけなのは事実だ。

なんのかんのと結局10年ばかり、エジプトと縁の切れない生活をした。
もう気分は「腐れ縁の友達」だ。
縁があり、憎めず、結局のところ好きだからそうなったのだろう。

エジプト式が何でも良いとは決して思わない。
なんでもかんでも現地式を受け入れて、
頑なに「エジプトってすばらしい国なんですっ!」と言い張る人もいるが、
それはそれで偏っていると思うのだ。
これはエジプトに限らず、どこの国でも言えることだと思う。

相性の良し悪しはあろうし、各個人の好みもあろう。
でも、世界中のどこにも、
100%正しくて立派でいいところだらけの国などありはしない。
どこに行っても、不満はどこかあるものだし、いいところもあるものだ。

敢えて言うなら、嫌になったら他国に行くなり日本に帰るなり、
という選択の自由のある場合、滞在の長短を問わず、どこの国でも、
あくまで「自分が好きで選んでやってきた」という事実を
忘れないでほしいなあ、と思う。
結局のところ、その国の住み心地を決めるのは本人なのだから。

と、なんだか本題からそれてきてしまったが、

カイロに一人で行って、誰も面倒を見てくれない状況になった人が必ずぶつか
る「タクシー問題」を今回は実践的に(?)取り上げたい。
これで少しばかり、カイロの住み心地が良くなれば何よりだと思う。


●ワタクシ流タクシー対策 in Egypt

現地で面倒を見てくれる人がいたり、運転手付きの車があったりすれば別だ
が、誰でもそう恵まれているわけではない。

実はカイロでは、タクシーに乗ること自体
「自家用車の買えない身分である」ということになってしまって、
上流階級(経済的に日本人はみなそのレベルといってよい)に
あるまじき行動なのではあるが、その辺を気にしなければ案外便利でもある。

以下、私なりの方法を簡単に御紹介しよう。


1)「適正料金」をある程度把握しておくこと

状況によりさまざまだが、泊まっているホテルや現地の関係者などから、
最新情報をなるべく集めておくとよい。
これは多かれ少なかれ、世界各地共通だろうが、
基準値を知らずに疑心暗鬼になるくらいなら、この辺の一手間はかけよう。

カイロの場合要注意なのは、ヨーロッパなどと違って
ツーリスト・インフォーメーションがあまり当てにならないことだ。
空港にもあるにはあるが、オープン時間などは
曜日や季節、大事なサッカーの試合の有無(?)などの諸要素により流動的。
だから、空港から街への移動などは事前にある程度情報を集めておくと安心だ。

特にカイロの場合は、空港を出てから街に出るまでが慣れないと大変だ。
予算を極限まで絞り込んだバックパッカーや、
「トラベルはトラブル」を座右の銘にして喜びとするような人でなければ、
事前に空港から最初のホテル一泊くらいまでを手配しておく、
というのもひとつの方法だろう。

ホテルなどの滞在場所が決まったら、いきなりタクシーに乗り込む前に、
複数の人に「目的地までの適正料金」を聞いてみること。
「複数」というのは、人によって言うことが違うからだが、
とりあえずスタンダードになる料金を調べて、頭に入れておくとよい。

尚、流しを拾う場合と、ホテルの前などで客待ちをしているタクシーは、料金
体系がまったく違う。ホテルによっても違う。
高級になればなるだけ高くなるのはもちろんだが、
同じクラスのホテルでも相当差がある。

ホテルからの場合は、ドアマンに料金を聞いてドライバーに確認させるといい。
この「ドアマンのいう料金」というのは、原則として定価。
いやなら道に出て拾え、ということになる。


2)乗るタクシーは選ぶこと

日本以上にタクシー・ドライバーの質は様々だ。
流しのタクシーでも、当たり外れがある。
基本的に彼らは皆「個人事業者」なので(元締めはいるらしいけれど)、
管理する会社などに苦情を申し立てるすべはない。

また、元カイロ在勤のホテルマンの立場から言えば、
「流しはお客様に勧めない」「タクシーでなく、運転手つきのリムジンを」
となる。何か問題がおきた時、責任が取れないからだ。

高級ホテルの前で客待ちをしているタクシーは、
言ってみればドアマンが元締めのような役割を果たしてはいるものの、
ホテル自体とは原則として無関係だ。
日本のホテルとタクシー会社の関係みたいなものと思えばよいかもしれない。

違うのは、日本のタクシーは何らかの形でクレームの持って行き所があるが、
カイロは「ない」というところだろうか。

となると、もめそうなドライバーを避ける、というのが第一歩となる。

ひとつ誤解を修正したい。
ガイドブックによっては
「タクシーは乗る前に必ず料金交渉」と書いているが、
これは例えば、カイロの街の中心部からピラミッドや空港に行くような
長距離を乗る場合であって、
流しのタクシーを拾って市内の近距離移動の場合、料金交渉はない。
さらっと乗って、降りる時に適正料金を払うだけだ。

観光地やホテルなどの近辺で、
料金を連呼しながら客引きをしているようなタクシーは、
最初から「不快の元」になると思ってよい。
また、流しでも、乗ったとたんに料金の話が始まったら降りてしまおう。

ただし空港など、長距離の場合は要交渉。
この場合もいきなり高額を吹っかけてくるタクシーは最初からやめよう。

個人旅行者の場合はホテルに頼んでもよいかもしれない。
多少高くついても、途中で変にごねられるよりは気が楽だ。

この料金交渉は「空港!」と叫んで止まったタクシーに乗り込んで、
走り出した後に車内で始まることもある。
私の友人で、乗ってはもめて降り、また別の車に乗っては降りを
繰り返しながら「気がついたら空港の近くにきてたから、歩いた」
という剛の者もいることはいるが、いい大人は真似をしないように・・・。


3)流しのタクシーの拾い方

日本式に右手を挙げて振っても一応止まってくれるが、
現地式では進行方向の地面を指差しながら(手を下に向かって振る感じ)、
行く先を叫ぶ。
ホテル名でも、大きな通りの名前でも、ざっくりした区画名でもよい。
誰か乗っていても方向が同じならば乗せてもらえる。

余談だが、日本でもバブルのころは終電過ぎるとタクシーなど拾えず、
この「エジプト式」を懐かしく思い出したものだった。
最近はすっかり様子が変わったが、それでもたまたま客待ちが多い時などは、
タクシーに向かって行く先を叫びたくなることがある・・・。

流しの場合は相乗りが基本なので、空車を拾うとドライバーの隣に座る。
但し、これは男性の場合で、女性が利用する際は必ず後部座席に座ること。
特に他意はなく「隣に座れ」といわれることもあるが、きっぱりと後ろに乗る。
他の乗客がいるとき隣に座ることもあるが、
降りたあとは後ろにさっさと移動する。
自意識過剰を気にする必要はないし、ドライバーも特に何も言わないはずだ。
逆に、あまりしつこく女性を隣に座らせたがるようなタクシーは、
最初から乗らないほうが賢明だろう。

都市部では変わってきてはいるものの、
エジプトの女性は原則として単独で行動しないものだ。
そういう保守的な国で、一人でタクシーに乗る外国人女性というのは
良かれ悪しかれ好奇心の対象となる。
思いがけない親切に出会うこともある反面、
痴漢まがいの被害にあうケースもないわけではない。

エジプト人というのは、元来屈託なく見知らぬ人ともよく話すものなので、
話し掛けられたからといって、即身構える必要はないが、
愛想よく話し込むうちに、最初は単なる世間話のつもりが、
だんだん「妙な期待感」に変わっていくケースは往々にしてある。
「どこからきた?」「カイロで働いているのか?」「結婚しているのか?」
といった話は必ず出てくる。

結婚については、嘘でも「YES」と答える。
話がくどい色を帯びてきたら、決め技は
「夫(ゴウジ)はインターポール(ボリス・ダルリ)」。

エジプトは、今も相変わらずと言えば相変わらずなのではあるが、
かつて国民が国内諜報に怯え暮らした時代の名残もあって、
官憲には心理的に大変弱い。
あまり明るい過去ではないので乱用するのも考え物だが、
この一言でだらだらしつこかったドライバーがまっすぐ前に向き直り、
きっちりアクセルを踏み込んだことが何度かあるのも事実ではある。

どっちにしろ、見知らぬ第三者、特に男性と、
むやみに仲良く話などしないのは常識といえば常識だろう。
特にエジプトにいる女性の場合、
中途半端なニコニコ会話が思わぬ誤解を生むケースがあることを、
とりあえずお忘れなく。


4)料金の払い方

外国人に一般的で、わかりやすいなのは、
いったん降りてから「適正料金」を窓越しにドライバーに渡し、
とっととその場を去る

「バック・ファイアー方式(?)」だ。

料金が適正である限りしつこく追いかけてくることは少ない。
この場合、おつりは返ってこないので、ぴったりの額を用意しておくこと。

実は現地式には、適正額を車に乗ったまま堂々と渡すことが多い。
細かいのがなければ「お釣りをXXポンド頂戴ね」と言えば、
ぶつぶついう場合もあるが、たいてい返してくれる。

どちらの場合も、にっこり笑って堂々としているのがコツだ、と思う。
エジプトの場合、タクシー料金に限らず、
目を吊り上げてヒステリックになるよりは、
ニコニコ堂々としているほうが、物事の解決が早いことが多い。
最初に書いたように、これは「昔、目を吊り上げていた人」の経験談。
お恥ずかしいことながら・・・。

以上はあくまでも、ワタクシ式なのだが、なにかご参考になれば幸いである。

(2005年6月23日配信)

*いまさら、なんですが・・・

週刊文春 6月16日号『阿川佐和子のこの人に会いたい』で
佐藤正久一等陸佐が対談していた。
この記事を読んで、つくづく感心したのである。

あのバランス感覚といい、誠意の示し方といい、どこをとっても
「中東との付き合い方」の完璧なお手本のようだったからだ。
中東に限らず、こういう人は世界中どこに行っても
尊敬され、大事にされるだろうなあと、過去の自分の心の狭さを思った。
知と情と機微を備えた、正しく「グローバルな意味での大人」だ。
こういう人は、なかなかいない。
端的に言えば「キャー、ステキ!」である(すみません)。

別に『軍事情報』が本体だからこういうコメントを出すのではない。

だいいち、この連載の読者諸氏は、
こうしたサマワでの自衛隊活動については良く御存知で、
いまさら何を言っておるのだ、寝惚けるのもたいがいにしろ、
と叱られてしまうくらいだろうが、この記事
「中東の人とのお付き合いマニュアル」としても非常に優れているのだ。

共感するところ、感銘を受けるところなど、
挙げていたらきりがないほどだが、
訪問先いたるところで出される甘いお茶を飲み続けて
「砲弾よりも糖尿病が怖かった」のコメントには大爆笑。

「我々は言ってみれば営業マンなんです」ということで、
出されるものは何でも笑顔で飲み込み噛み締めた、との由。
カイロなどという都市で営業マンをやっていた私にとっては、
共感が奥歯にしみるようなエピソードだ。
しかも場所は、衛生状態に不安のあるサマワなのだから、
御苦労のほどがしのばれる。

「家もやる、土地もやる、嫁もやる。だからここにいてくれ」というのは、
中東的には最大級のコンプリメントだ。

こういう人がいる、と思うだけで心が温まる。
この前向きな努力は、さまざまな形でイラクと日本の関係に
ポジティブな未来を創る原動力となることだろう。

(2005年6月23日配信)


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カイロキャブ【ピラミッドが見える家】at 2006年03月16日 21:58

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