2007年10月09日

カイロのオペラハウスと地震の思い出 其のニ

(前回よりつづく)

カイロのオペラハウス。
何度か出かけたが、実に立派な建物である。
上記の通り、日本の某ゼネコンが日本政府の全面援助の下に建設したもの。
エジプトにこういう施設を作る意義などは云々すまい。
この無駄に立派な施設のおかげで、我が日本国の彼の国におけるプレゼンスは
少なからず上がっているはずだから。

ここの敷地が無駄に広くて、車がないと建物に行き着くまでが大変だ。
車があっても駐車場から結構歩く。
本来オペラハウスとは運転手付きの車で出かけるもの、ということなのだろうか。
この辺に微妙な「エジプトX日本」のオペラ常識のずれを感じてしまうのではあるが、
まあとにかく立派な建物だ。
動線は悪いが。

では劇場所属オペラやオーケストラの実力は、となると、どうも寂しいものがある。
エジプトの場合、西欧のクラシック音楽に親しむ趣味のある層など、まずほとんどないと
言ってよい。
だから、基本的に聴衆不在の国だ。
あとは推して知るべし。

予算も潤沢とは言いがたい。
先の記事を提供してくれた友人は、カイロのオペラハウスと色々お付き合いのあった人
なのだが、彼女の話を色々聞いていても内幕は結構大変そうだ。
実際に演目を観ても、衣装はペラペラだわ舞台装置も小学校の学芸会なみだわで、
観ているほうがどうも辛くなってくるくらい「お台所苦しげ」なのだった。
最近は少しはよくなったのだろうか?

ホテルもそうだし、まあ何事にも通じるのだろうが、立派なハードを作るのは実は簡単な
ことで、問題はそれをどう維持管理して有効活用していくかというソフト部分なのだが、
エジプトに限らず「作りっぱなし」が世の中結構多い。

話がずれるが、東京辺りに文字通り雨後の筍のごとくニョキニョキ立派な外資のホテルが
立ち並ぶ様子を遠くから見るにつけ、建物は作れるにしても、従業員は足りるのかいな、
と他人事ながら心配になる今日この頃。
ハードは作れるだろうが、従業員をどうするのかねえ・・・と思うのだ。
単に英語ができるできないという問題ではなくて、日本人でも外国人でも普通に接客の
こなせるようなホテルマンが、そうそう潤沢にいるはずないのだがなあ。

こうしてみると、カイロのオペラハウスと似たり寄ったりの話に思えてくるから不思議だ。

さて、地震の話。
この友人が言うように、エジプトはほとんど地震が起きないところなのだが、ある時
わりあい大きな地震があった。うろ覚えで恐縮だが、1993年ごろだったと思う。
なにしろ「耐震構造」などという言葉の概念自体が存在しないので、その被害ときたら
大変なものだったと聞く。
その直後に揺り戻しがあった話ははじめて聞いたが、オペラハウスで観衆がパニックを
起こすのも無理はない。

そもそも、日本人くらい地震慣れしている国民のほうが、世界的にむしろ珍しい。
「地震が起きたとき、どのように行動するか」なんてマニュアルが、国民全員の意識に
きちんと刷り込まれているなど、実は稀有なことなのだそうだ。

そんなわけで、トルコ政府がカイロの地震のしばらくあとに、日本から地震の権威を
招聘して諸々の指導を依頼したことがある。
そのときの某教授氏が勤務していたホテルに泊まっていたのが縁で、色々お話を
伺う機会があった。

「先生、イスタンブルにも近いうち地震はあるのでしょうか?」と尋ねたところ
「うむ、近いうちにあるだろうね、きっと」との答え。
青ざめる私を見て笑いながら、
「たぶん、数ヶ月以内から2〜300年以内に」とおっしゃった。

地質学の研究者にとって、数百年というのは「最近乃至は近未来」である、と。
なるほど。

そして地震対策だが、やはり肝心なのは街づくりと、それ以上に地震に対する
各国の行政や人々の意識だそうだ。
この先生はその後エジプトにも招聘されて、このときには勤務先に電話を下さって
再会を喜んだものだった。

そんなわけで、前回の話にあった「オペラハウスに日本人だけのんきに取り残される図」
は、十分起こりうる。
どの程度の地震がどの程度怖いかを知っているのは、まず日本人だけなのだから。

でも、その光景を想像すると、ついついクスクス笑いが出て仕方がないのでもある。

(つづく)  

Posted by arimaburabura at 20:30Comments(10)TrackBack(0) | Amazon.co.jp | 楽天市場 | ブログ