2006年10月15日

預言者ムハンマド風刺画問題が再燃!

呆れて声もでないが、またデンマークで阿呆な事態が・・・。

まあ、よく聞いてみると、極右政党の若い連中が夏の集まりで酔っ払って、またまた悪趣味な絵を描いて遊んでいた、という、実に幼稚でお粗末な話。

しかし、意地の悪いことに、ここに潜入していたアーティストがその様子をビデオに撮って、ネットで全公開してくれたおかげで問題が公になってしまった。

詳細は以下ニュース参照。

http://www.asahi.com/international/update/1011/022.html

http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20061012-102707.html

デンマーク製品の不買などで、相当な経済打撃をくらい、当初の対応の悪さも手伝ってすっかり対外イメージが悪くなったラスムセン首相は、この事態に批判声明を出している。
「やっと忘れてもらいつつあるのに、いい加減にしてオクレよ・・・」と、トホホな気分なのかもしれない。

今回の事件は「私的な集まり」と気を抜いて悪ふざけをした「右翼のオバカな若者」のやらかしたことで、こういう低レベルな連中は相変わらずだ、という事実にはさほど驚きを感じない。
ヨーロッパ各国、こういう馬鹿はどこにでもいる。

むしろ悪意を感じるのは、この映像を流したアーティストとやらの行動だ。
なにを思って公開したのか?
極右政党の批判、というより、もっと悪質な意図が感じられる。

なぜ、こういう形でイスラーム世界を挑発しなければいけないのだろう?
この類の挑発に、イスラーム世界が確実に激昂するのを見越した上だとしたら、悪意の根は深い。

最近、こういった「正義の味方」を装って、イスラーム世界を挑発し過激化させる動きが意図的に仕組まれているように思えてならないのである。

対立を深めることで、利を得るものがそこにいる。
  

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2006年04月18日

風刺画問題、その後〜「ニュースのお時間です」

やっぱりタダではすまなかった。
デンマークの乳製品輸出高が昨年同月比で85%ダウン。

乳製品の輸出がかなり大きな比重を占めるデンマークでは、笑い事でない状況になっている。
あのとき、しかるべき姿勢でしかるべく謝罪をして、しかるべき行動をとっていればこうはならなかったろうだけに、愚かしさのツケはあまりに高い。

詳細は以下参照。
http://news.www.infoseek.co.jp/business/story.html?q=11kyodo2006041001003113&cat=38

しかし、乳製品の購買層にこれだけイスラーム圏が貢献していた、という事実にもちょっとびっくり。

デンマーク、気の毒だが、反省してももう遅いよ。
  
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2006年03月03日

続・預言者ムハンマドの風刺画問題

●御礼

まずは、御礼を申し上げたい。

なんと昨年三月三日の雛祭りの日から、一年が過ぎたのである。
雛祭りがどうしたというと、本連載が配信開始した日である。
そう、本号は一周年記念号なのだ。

なお、雛祭りは単なる偶然である。
本誌『軍事情報』主筆のエンリケ航海王子殿下が「大の桃好き」だから
「桃の節句」というわけでもない(言うまでもないことだが、果物の桃だ)。
まあ、無意識のうちになんとなく明るいスタートだったんだな、
とポジティブに考えることにしよう。

だからうまいこと『第50回』だったりするとよかったのに、と、年明けあたり
ちょっとサボってしまった回数を、よせばいいのに数えてみたら、
サボってなければ『第50回』だったという事実も判明した。
数えなきゃよかった。

開始当初は10回完結を想定しており、では25回位をめどに・・・
などといっていたら、アレレと一年経ってしまった。

連載打ち切りも通告されずに続けられたのは、ひとえに読者の皆様の温かい
励ましと、エンリケ殿下はじめ「おき軍事」スタッフ一同様のお支えと御理解
あってこそのもの。
この場を借りて、深く深く御礼申し上げたい。

このように四方八方に御礼申し上げて、今後の抱負などを語ってきれいに
終われればよかったのだが、それではただの「手抜き」である。
そもそも、今回が一周年ということに気づいたのが、
先週号を配信したあとだった。

そんなわけで、大変中途半端に「つづく、インシャアッラー」の話が
二つもある。

計画性のなさが露呈した感じだが、性分なので仕方ないし、と開き直って
「風刺画問題」のほうを続けようと思う。

本連載の合言葉は「マーレーシュ」と、この一言に尽きるのである。



●風刺画問題の続き 〜 改めて思う「欧州」の複雑さ

さて、今回の話の発端がデンマークだったので、
改めてヨーロッパを考えることになった。
最初「スカンジナビア」とひとくくりにしてみてから
「ちょっと待てよ」と立ち止まる。

かくして二週間前に
「あ〜もういいかげんになんか記事を書かなきゃあなぁ・・・
『風刺画問題』か。これは一応なんかコメントすべきだろうな〜」という
大変いいかげんなスタート地点を得て、ナンノカンノとぼんやり考えた結果、
なんとなく出てきた思考の垂れ流しである、とお詫び申し上げてから、
平気で公表してしまおうと思う。

言い訳がましくなるが、どうもこの単純思考は、
長いこと中東にどっぷり使っていた中東ボケもありそうに思える。
中東の場合、確かに各国の国情は違うとはいえ、ヨーロッパのように極端な
「各国個別の独特さ」は薄い。イスラームという非常に強いバックボーンをも
って、個々の文化を育みながらも、強い一体感のあるエリアなのである。

一方でヨーロッパの場合、艱難辛苦を乗り越えてEUを立ち上げてはいるけれど、
背後を支える絆や一体感は、はっきり言って薄い。
そもそも、集団で等しくメッカに向かって礼拝することを生活の基とする
イスラーム圏の人々が、良し悪しでなくて「集団での行動」を精神規範として
いるならば、ヨーロッパは皆様もよくよくご存知の「個人主義」の本家だ。

だから、今回の風刺画問題でまともな議論が成立する土壌自体、
あるわきゃあないんである。
もうひとつ敢えて言ってしまえば、そういう地域に着々と浸透する
イスラームの人々は、理屈ぬきに薄気味悪く見えても致し方ないだろう、
と考えた。

薄気味悪いやつらだ、と侮蔑しつつ(人種的優越感はヨーロッパのお家芸)
実は内心怖れているのでもある。
そりゃあ、彼らクリスチャンで、神様は信じているけれど、
何だってこんなにファナティックになっちゃうの??と「理解不能」なのだ。

日本人も一般にイスラームに対して、正直なところ「ちょっと薄気味悪い」
という感覚を持っていると思うのだが、ヨーロッパの場合ここに「侮蔑」が入る。
ヨーロッパお得意の人種差別感覚というやつだ。
しかも、各国事情はいろいろあれど、相当数のイスラーム人口が各国の中で
馬鹿にならない大きさのコミュニティーを作り上げるにいたって、
生理的な反感が急速に育っていったのは、不思議でもなんでもない。

イギリス、フランス、ドイツなど、いわゆる「大国」といわれている国々は、
この辺の薄気味悪さと怖れを何とか飲み込んで覆い隠そうとしてはきた。
特に過去、他国を征服することで「植民地」というえげつなくい領土拡張政策で、
歴史上いい思いをした国はうしろめたさもあったろう。

で、時がたつごとに色々面倒で厄介なことが出て気はしたけれど、
それなりにうまいことやってきたのだが、
デンマークという小さな国のおっちょこちょいが
『パンドラの箱』をうっかり開けてしまったわけだ。

ついでに付け加えておくと、ヨーロッパとアメリカではまた感覚が違う。
ついつい私も「欧米」とひとくくりにしてしまいがちなのだけれども、
感覚の違いを端的に言えば、
「アメリカ人は有色人種を『差別』し、ヨーロッパ人は『区別』する」
というところに尽きるだろう。

だから、アメリカの反イスラーム感情は、ヨーロッパのそれとはまた違う。
人種的、国家的優越感などの部分で重なるところは確かにあるが、
私に言わせると多分に政治的な色合いが強く、ヨーロッパと違って
「アメリカ的一体感」というバックボーンに支えられているから、
これはこれでたちが悪い。
なんせ"United States"。
ヨーロッパのように"Union"じゃない、つまり、寄り合い所帯じゃないのだ。

とりあえず、私がこの場で反省するべきは、前回の記事で
「欧米圏でのイスラーム対クリスチャン対立の構図」なんて、
いかにも口当たりのいい類型化をしてしまったことだ。
そんな単純な話ではない。

また、ヨーロッパに移住定住したイスラーム層と、
本来イスラーム圏に居住する層では、内包する問題が違う、という事実もある。

あまりに複雑なので、ちょっと時間をかけて解きほぐしていこうと思う。
とりあえずは、こんな構図なのではないか、と思い至った段階である。


●風刺画騒動のその後

と、いろいろ考えさせられている間に、大変ばかげたニュースを耳にして、
なんだか膝から力が抜けたような気分になってしまった。
ユランズ・ポステンという、そもそもの騒動の発端になった新聞、
2月23日付けにて『ビクトル賞』なる賞を受けていたというのである。
受賞の理由は「脅威にさらされた表現の自由を数カ月にわたり守った」とのこと。

ナンノコッチャ、と思えば、デンマーク国内のメディアに出されるものだそうな。
なに考えてるのやら、と授与の元を聞いたら、"Ekstra Bladet"なるタブロイ
ド紙。

とほほ。

ヨーロッパによくある「タブロイド紙」というのは、ゴシップやらが主体の夕
刊紙で、広告収入の多くはセックス産業関連。まあ日本の「Tスポ」とか「Nス
ポ」の程度を、もっと極端に低くしたものと考えてよい。

新聞についてちょっと解説すると、欧米(この場合は一緒くたでよろしい)の
場合、読む新聞で階層、知的レベル、場合によっては政治的主義主張までが知
れる。

日本のように、朝パリッとスーツにネクタイを決めて『日経』片手に背筋を伸
ばして出勤するビジネスマンが、帰りの電車じゃ『東スポ』をぐしゃぐしゃに
握り締めて、ネクタイゆるゆるの酔っ払いオトーサンと化すことはないのだ。

まあこれは、日本ならではの情けない光景ながら、いやみなスノビズムがない
ので、個人的には愛情を感じるものではあるけれど。
尚、例に挙がった『ビジネスマン』が誰のことかは、読者諸氏のご想像に託す
ことにする。

私もドイツにいたころ、速読の練習のためにタブロイドを買ってきて、当時の
同居人に「恥かしい!"Die Zeit"を読め!」と非難されたことがある。
で、実際読んでみて、二日でやめてしまった。
あれは「見る新聞」で、読むものではないのである。
だからドイツ語のお勉強にはなりません。
尚、一応弁解しておくと、ワタシのドイツ語はいまや速読どころか「超遅読」
もNGになっちまったが。

で、件の"Ekstra Bladet"、基本的にはリベラルを標榜しているが、要するに
「売れれば何でもいい」報道姿勢。
ユランズ・ポステンの場合、編集方針はともあれ、少なくともデンマーク国内
では『一流紙』の扱いになっているはずだ。
しかも、トップが一応ナンダカンダと「どうもまずかったかなあ」という詫び
とも謝罪とも言い訳ともつかん発言をしているのではある。デンマーク語など
さっぱり読めないから、本当のところどういうニュアンスで何を発言したのか、
自分の目で確かめられないのが残念だが、どうも前向きな反省というよりは
「愚痴」に近い。
と、いうより、まるで反省している様子はない。

挙句にこういう低レベルなタブロイド紙から「よくできました」と褒められて、
素直に受けてしまうのだから、確信犯的に悪意があるのか、まるっきり思考能
力のない阿呆なのか、それともデンマークの国のマスコミというのは、そこま
で仲良しこよしの田舎クラブ的なのか・・・と、逆にいろいろ考えてしまった。
どうなっているのかねえ。

日本で例えていえば、東スポが読売新聞に「報道の自由を守った事実を讃え、
これを賞する」と賞を出したようなもんだ。

読売新聞がこの状況で、東スポから賞を受けるか?
受けないでしょう?

確かに日本の十分の一程度の国土で、大新聞といったって15万部程度という
ことだ。
デンマークって、そんなに素朴な田舎の国なのかなあ・・・と、つい思ってし
まう。


●北欧について

さて前回、北欧についての自分の無知さに改めて呆れて、ちょいとにわか勉強
をした。
所詮はにわか勉強だからたかが知れているが、各国それぞれの漠然とした輪郭
は見えた気がした。
それにしても、北欧関連の書籍が意外なほど少ないのには驚いた。
中東関連書が山をなすのと対照的である。

まあ、行ったこともない国の話を延々と解説するのも妙なので、
とりあえずわかりやすいジョークをひとつ。
イギリス人のD.コナリーが『スカンディナヴィア人』という本で書いたものだ
(新潮社『北欧』より)。

船が難波し、北欧各国の男たちが二人ずつ一つの無人島に漂着した。
彼らが島から救出されるまでに、デンマーク人は二人で協同組合を作り、ノル
ウェー人は釣り舟を作り、フィンランド人は木という木を切り倒し、そしてス
ウェーデン人は相手から自己紹介されるのを待ち続けた。

もうひとつ。

やはり同じ状況下、デンマーク人はジョークを言い続け、ノルウェー人は喧嘩
し続け、フィンランド人は酒を飲み続け、そしてスウェーデン人は相手から自
己紹介されるのを待ち続けた。

なるほど、と思う話である。

いろいろな方から情報をいただいたが、どうもフィンランドはちょっと傾向が
違うようだ。
違うけれども、隣人としてうまくやっている、というところらしい。

さて残る三国の場合、地図を見ても一目瞭然だが、ざっくりとノルウェーとス
ウェーデンの国土はほぼ日本と同じ一方で、デンマークは前述したが十分の一。
だから、デンマークは地理的にそうであるように、北欧の中では「一番ヨーロ
ッパ的」らしい。
その上にあるノルウェーは、自然気候条件の厳しい山岳地帯とともに天然資源
を持ち、スウェーデンは全体に国土が豊かである。

で、ノルウェー人はスウェーデン人に、なんとなくコンプレックスがあるとの
ことだ。
しかし、スウェーデン人は特にノルウェー人に特殊な思惑はないらしい。
ふんふん、なるほど。


●なぜ、デンマークだったのか?

上記の状況に、デンマークの国内情勢とイスラーム系の移民状況を重ねると、
事の発端がデンマークで起きたのが何故か、うっすらわかるような気がする。

そもそも、ヨーロッパ各国それぞれの事情で、イスラーム系の移民を「低賃金
の働き手」として受け入れ始めたのが二次大戦後の1960年代だ。
当時はヨーロッパの景気もよかったし、階層意識の強いヨーロッパのことだか
ら、掃除やごみ処理、土木工事といった「汚れ仕事」に自ら手を下さずに済ま
せて、ついでに安上がりな労働力を「輸入」することにしたのである。

ところが70年代初めのオイルショック以降、ヨーロッパの景気は一気に低迷
し始める。
その辺の事情は各国で違うが、こうした「経済難民」を積極的に受け入れて、
居住と労働を許した状態が10年以上続けば、どこであろうがイスラームのコ
ミュニティーが発生し拡大する。

自業自得の結果とはいえ、このコミュニティーは定住した国と馴染み交わろう
としない。
ヨーロッパというのは、どこの国でも「そこの国民としての規律と生活を身に
付けて、そこの国の言葉を覚えてその国の人間のように振舞って溶け込めば、
一応存在を認めてやるよ」という姿勢がある。
国によって程度の多少はあるけれど、間違いなくある。

しかし、異文化を持ち込んで、そのままの生活を基本的に崩さないコミュニテ
ィーが国内に生まれたら、これは非常に薄気味悪がられるのは間違いない。
それで済めばまだいいほうで、迫害や差別の対象にすらなる。
これについてあえて非難はすまい。
日本だって同じだと思うからだ。

イスラーム系住民のしめる割合は、"MUSLIM POPULATION WORLDWIDE"の、以下
サイトに詳しい。
http://www.islamicpopulation.com/europe_general.html

国民総数からすれば、数も規模も当然違うだろうが、デンマークの場合、ドイ
ツやスウェーデンと大体似たような「約3%」という数字が出ている。

たかが3%と侮れない。
ルーテル派のプロテスタントが92%を占めるこの国では、第二位につける宗教
がイスラームとなるからだ。

スウェーデンも似たような状況らしいし、難民受け入れには前向きである。
ノルウェーの場合は、現政権がパレスチナ問題に前向きに取り組んだ実績がある。
ドイツ、イギリス、フランスなどヨーロッパの大国は、それぞれの事情と歴史
的背景を持って、現状と何とか対応しようとしている(しかし、テロの温床に
なっているような現状では、前途多難ではあるようだ)。

さて、デンマークはどうかといえば、2001年まではわりあい難民受け入れに積
極的で、現状そうした政治難民としてデンマークに移住してきたイスラーム人
口は、デンマークで定住している中でも40%を占めるという。

しかし、2001年にラスムセン党首が率いる自由党が第一党となり、ラスムセン
政権が発足。
「外国人移民対策の強化」を強く訴えて、国民の支持を得たのである。
このいわゆる「保守右派路線」が国民の支持を得る、ということは、デンマー
クという国自体に他のスカンジナビア諸国のような余裕がなくなってきている、
ということなのではなかろうか。

以降、移民受け入れの条件や外国人へのビザの発給基準が、他のスカンジナビ
ア諸国と比べて相当に厳しくなる。

こういう状況を考えて、ついでに先ほどのジョークもかぶせてみると、「パン
ドラの箱」を開けたオッチョコチョイがデンマークでも、それはなるほど不思
議はないな、という思いに至る。

北の田舎のジョーク好きが、お身内感覚のちょっと悪趣味な悪ふざけをやって
みたら、うっかりフランスのイジワルなやつに見つかって、大騒ぎになってし
まった・・・ということか。

尚、デンマークの主要産業は酪農で、乳製品の輸出はデンマーク経済でも重要
なところである。
裕福なアラブ諸国で、デンマーク産乳製品の徹底的な不買が起きたら、これは
ちょっとした打撃に違いない。
ユランズ・ポステン紙は、きっとこの辺りの企業スポンサーに軒並み見放され
ているんだろうな、と思うと、ちょっと溜飲が下がる思いはする。  
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2006年02月17日

ムハンマド風刺画問題〜『クーリエ・ジャポン』の特集

この問題について記事を配信した16日木曜日、近所のコンビニにおやつを探しにでかけた。

と、早速『クーリエ・ジャポン』という隔週刊のニュース誌がこの話の特集を組んでいるではないか。
ありゃ、これまた間がいいと言おうかなんと言おうか・・・と、とりあえず買って帰った。
欧州各国マスコミの論説や事態の経緯など、当然のことながら私の書いた中途半端な作文なんかと違う、遥かに良くできたものが読める(ははは)。

発行されたばかりなので、ご関心のある向きは是非一読をお勧めする。

これは読者のmarumiさんという方にコメントでもお知らせいただいたが、記事の中に『欧州各国におけるイスラム教徒の数』というチャートが出ており、この情報源となった"MUSLIM POPULATION WORLDWIDE"(http://www.islamicpopulation.com/)というサイトがなかなか面白かった。

各国のイスラーム事情も記事としていろいろ出ており、特にデンマークのもの(http://www.islamicpopulation.com/Denmark_islam.html)は、ちょうど知りたかった内容がきれいにまとめられていて、なるほどなるほど、と読んだ。

長くなるのでこのあたりは、来週のマガジンのほうの記事として取り上げようかと思っているが、おかげさまで記事を書きながらうっすら感じていたことが、少し像を結んできた気がする。

いくつかあげると、例えば「北欧とひとくくりにしてしまったけれど、これは違うのではないだろうか?」ということ。件の特集でも出ていたが、イスラーム/非イスラームを問わず、移民や自国に入り込む異文化への感情は、同じ北欧でも結構温度差があるようだ。
多分国民性も相当違うのだろう。

日本・中国・韓国をひとくくりにして「同じような国」と言った様なものだ。
お恥ずかしい・・・。

もうひとつ、デンマークの状況は、海を隔ててお隣のドイツと妙に重なる感じがしていたのだが、上記記事を読む限りでは歴史的経緯はやっぱり似ている。
国力、人口、歴史など考えれば、当然同列で全て語れるものではないが、なんだか不思議と似ているような気がする。

「寒くて物価高くて、メシがまずくてろくな酒のない北欧なんぞ、
ワタシにとっちゃ世界の反対側よ!」
などと食わず嫌いしていたツケが見事に回ってきたな・・・と思いつつ、
来週までの宿題にしている次第。

北欧各国の人々の国民性・・・ざっくりしたイメージだけでも知りたいのだけれど、ご存知の方がいらしたら是非教えてくださいまし。

  
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2006年02月16日

預言者ムハンマドの風刺画  【第44話(番外編)】

●事の顛末

昨年末頃に始まったこの話、あちこち飛び火してえらい騒ぎになっている。

ぼんやりと野次馬を決め込んでいたのだが、相互リンクをいただいている
『アラビア語に興味があります』というブログの記事に掲載された件の絵をみ
て、
ナンダコリャ?!と今更ながらあきれてしまった。
そこで自分のために、何がどうしてどうなったのかまとめようと考えた次第。

いまさら何を寝惚けているのだ? という方には、お詫び申し上げます。

一番問題になっているKurt Westergaard氏による風刺画は、
なにやら中国/日本風な墨絵のタッチですらある(上記記事の冒頭参照)。
馬鹿にされてるのは、イスラームだけじゃないよ、これ、と思う。
所詮スカンジナビアって、この程度の国際感覚しかないのかい!と情け無い。
あまりに薄っぺらくて、知性のかけらも感じられない。

そもそもはデンマークのJyllands-Posten(ユランズ・ポステン紙)が、昨年9
月30日に12名の漫画家に預言者ムハンマドのひとコマ漫画を書かせて出したの
が発端だ。
以下のように、ずらりと一面に並べてある。

http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Jyllands-Posten_Muhammad_drawings.jpg

この新聞は、Wikipediaによると1871年創業の一応は歴史のある新聞。
『保守右翼系』なのだそうだ。さもありなん、というところか。

デンマーク国内のイスラーム協会などの激しい抗議運動が起こり、アラブ諸国
の駐デンマーク大使らがデンマーク首相に直接抗議しようとするも、あっさり
と面会拒否。

その後10月17日に、Al Fagrというエジプトの新聞が一面で取り上げ(こちら
は2005年5月創刊の新しい週刊新聞)、このあたりからイスラーム圏全体に怒
りと抗議が巻き起こり、あっちでもこっちでも大騒ぎになって現在に至る。

尚、件のJyllands-Posten紙は今年一月末に、諸々の抗議に対して「問題とな
っている風刺画は穏健で無害なものである」と改めて「釈明記事」を出したと
の由。
しょうもない新聞らしい、ということは強く感じられる。


●欧米圏でのイスラーム対クリスチャン対立の構図

まことに物知らずなことだが、実は今回の騒ぎの発端が、割合とリベラルで穏
健なイメージの北欧で、しかもかなり過激な反イスラーム感情が社会的に潜在
しているらしい、という事実に驚いた。

とりあえずあれこれ検索するにあたって、一番問題となっている風刺画を描い
たKurt Westergaardをみたらば、以下の記事に行き当たった(ていうか、最初
に出てきた。大変いいかげんな情報収集でスミマセン・・・しかし便利な世の
中になったものです)。

http://bibelen.blogspot.com/2005/12/drawings-of-mohammed.html

こちらには、問題となった12人の作家の作品が名前つきで上がっているので、
とりあえず一覧用に引用する。しかし、記事の内容としてはげっそりするほど
ひどいものだ。
その上、書き込まれたコメントの半分ほどは、ほとんどぶっ壊れた英語で「ム
スリムなんて全員テロリストだ!」「やつらは全員殲滅すべし!」といったト
ーン。
やれやれ。

まあ、このブログ自体が反イスラームを前面に出しているのだし、これをもっ
て全てと思う気もないが、日本人が想像する以上に、イスラーム系住民という
のは欧米各地で反感を、それも非常に幼いくらい原始的なレベルの反感を買っ
て生きているらしい。

一方のイスラーム世界の反応も、悪質なアジテーターが背後に間違いなくいる
とはいえ、非常に感情的である。
偶像崇拝を厳に禁ずる宗教でもっとも「聖」である人物が戯画化されたのだか
ら、激するのは当然だろうが、描いたほうの馬鹿さ加減と無知さを笑う余裕が
もう少しあってもいいかなあ、と感じる。
実際、発表された風刺画の中には、怒り狂う同胞に別のイスラム教徒が「まあ
まあ、落ち着けよ。所詮はヨーロッパ北田舎の不信心な馬鹿もんがやってるこ
った」なんていっているものもあったし。

まあ、欧米社会でイエス・キリストを真っ向切って同じようにコケにしたら、
一体どういうことになるか?!なんて、想像しただけで恐ろしいことだから、
そのあたりの欧米的無知無教養と傲岸不遜さは限りなく不愉快だ。それは間違
いない。
アメリカ人の集団ヒステリー型の傲慢さも嫌いだが、ヨーロッパ人(特に中欧
以北)の妙に小理屈の多い白人優越感覚もいやなものだ。
どちらもあくまで私の個人的な気持ちに過ぎないけれど。

くどいようだし、くどくいうほど真面目さに縁がないながら、
私は一応クリスチャンである。
だから、欧米メディアが他宗教の「聖」とするものを面白半分にいじる行為は、
単なるジョークを超えた悪意を感じる。

イエス・キリストの教えの基は「愛し、許し、受け入れ、与えること」じゃな
いのか。
だとすると、昨今の欧米キリスト教徒の一部は、かなり道を踏み間違っている。

とにかくお願いだから、宗教を悪意の道具に使わないでほしい、と願うワタシ
ではある。


(2006年2月16日配信)  
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