2006年06月17日

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カイロ住宅事情 其の一 〜シンドラーのリフト(?)〜 【第58話】前編

●ちょっとだけ高所恐怖症

昨今巷をにぎわせている、シンドラー社のエレベーターの話を聞いて、
カイロのころの話を思い出した。

その記憶と絡めて、住宅事情など。

私は基本的に「高所」というのが苦手だ。
まあ、眺めのいいトップフロアのレストランで食事、などと言うのは平気だし、
観覧車に乗るのも好きだ。
もちろん飛行機に乗るのだって平気なので「高所恐怖症」というほど大げさでは
ないものの「吹きっさらっし状態」の高所には近寄れない。

でもまあ「高層階でお食事」よりは「明るいテラスでお食事」だし、
「観覧車」よりは「公園のお散歩」だから、やっぱり得意科目ではないのだろう。
もちろん「飛行機」よりは「列車」なのは言うまでもない。
その選択肢がある限り、だが。

高層ホテルの外窓清掃の様子など、見ているだけで心臓の奥が痛くなるくらい
怖い。
ホントに怖い。

カイロ名所の「カイロタワー」など、二回ほどやむを得ず行ったが、
連れて行ったお客さんの前で笑顔を保つのが、恐ろしく苦しかったのを
覚えている。

あそこ、もちろん手すりはついているが、一番上は吹きっさらしなのだ。
その手すりだって、エジプト人の管理化にある。
馬鹿にするようなことを言ってはいけないだろうが、メンテナンス感覚が薄い
国民性なので、寄りかかる気にはなれない。
とりあえず、背中を内壁に貼り付けるようにして、さりげなくカニ歩きだ。

子供のころ三階くらいに数年住んだことはあるけれど、あとはずっと一軒家
だったし、何故かその後、学生時代の札幌から結婚してしばらく経つまで、
常に住居はせいぜいが5階くらいまで。
だから「眺めの良い高層階に住む」というのがどういうことか、
まともに考えたことはなかったのだ。

最近、スイスのシンドラー社のエレベーターに色々問題が起きて世間を
騒がせていたが、それでふとカイロでの出来事などを思い出してしまった。


●カイロの住居

カイロ都市部では、住居は大半がアパートメントだ。
日本と違って、石造りの建物が多い。
余程のことでもなければ、隣近所の家内での騒音が耳につくことはないし、
天井から足音がどかどか、ということもない。

基本的に屋外の熱気を取り込まないような構造になっているらしく、夏は外より
部屋の中のほうが涼しい。
建物が古いほどそうなる。

ついでに面白いのは、日本では暑いと窓を開けて風通しを良くして・・・とやるが、
カイロでは本格的に暑くなると、雨戸まで閉めて外の熱を遮断する。
外気温40度超え、などというときは別として、案外それでしのげるのだ。

カイロでは、下は月1万円程度から、上は月20万ほどの高級マンションまで、
ずいぶん色々なところに住んだ。

嫌味めいて聞こえるといけないが、一番高級なマンションは250平方メートル
で3LDKだった。
すべて高級家具までついて、普通の六畳間がワンセットでパンパンになるような
ソファのセットが、リビングに3セットばかり置いてあって、ロココ調の大食卓が
ゆったりと鎮座ましましていたものだ。

そこまでいかずとも、カイロのアパートメントは相対に広くできている。
大家族での生活が基本だから、チマチマとワンルーム、などという発想自体が
薄いのだ。
実際、子供がそれなりの年になったら家を出て一人暮らし、という発想はなくて、
男女問わず「結婚するまで親と同居」が常識だ。

外国人用の賃貸に出てくる物件に良くあるのが、息子が結婚するときのために
一応住居は用意してあるけれど、当座のところは空いているので、数年で帰国
する外国人に貸す、というパターンだ。

よく聞く冗談で、アメリカ人などが日本のワンルームマンションに入って、
「で、ここが玄関で、部屋はどこなの?」というのがあるが、
一度向こうに住みついてからたまに帰国すると、その気持ちがなんだか
わかる様な気がした。
私の実家が、所謂ワンルームの住居を賃貸していたことがあるのだけれど、
小さい部屋など「カイロの自宅のバスルーム」だった。

母に「ウチって狭いなあ」とぼやいたら「もう二度と帰ってこなくてよろしい」
と言われたこともある。

これ以上言うと、みなさんに嫌われそうだからやめておくが、とにかく各物件、
広いだけは広い。
建物の状態やら設備やらで、賃貸料は天と地ほど違うが、どっちみち広い。
ただし、ボロいところは恐ろしくボロいのではある。
そういう、だだっ広いだけでボロいアパートメントに住むのも、これはこれで
案外しんどいものだ。
(2006年6月16日配信)

→後編に続く




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