2006年05月12日

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ジョークについて 其の二 〜エジプト人の笑いのツボ〜 【第56話】後編

(前編http://arima.livedoor.biz/archives/50468287.htmlにつづく)

●あるサイーディーが・・・

披露したネタは、私が知っているくらいだから、誰でも知っているノクタ。
以下のとおり:

あるサイーディーが、デューティーフリー・ショップに行った。
テレビを一台買おうと、店員に「このテレビをおくれ」と言ったが、
「ダメダメ、サイーディーには売れないよ」と追い払われてしまった。

しかしそれにしても、どうして俺がサイーディーだとわかったんだろうな?
と、悩んだ男は、たぶん服装のせいだろうと、今度はジーンズにTシャツという
都会風の格好で再び店に出かけた。

「このテレビをおくれ」
「ダメダメ、サイーディーには売れないよ」

男は再び店員に追い払われてしまった。

どうして俺がサイーディーだとわかったんだろうな?、と男は悩み、
今度こそはとばかりに気合を入れて、立派なスーツを着込み、ネクタイを締め、
これならば大丈夫に違いない、と自信満々で店に再び出かけた。

「このテレビをおくれ」
「ダメダメ、サイーディーには売れないよ」

さすがに腹を立てたサイーディーは、店員に言った。

「おまえ、どうして俺がサイーディーだとわかるんだ??!!」
「だって、これはテレビじゃなくて、冷蔵庫だぜ」


●エジプト的キャラクターの不思議さと面白さ

この話はいろいろバリエーションがあって、テレビ&冷蔵庫の組み合わせに
限らないが、もう本当に古典中の古典だ。
これが、馬鹿受けする。
何度やっても受ける。

挙句「アリーマは一つノクタができる」という噂がホテルに広まって、
こっちがどんなに忙しかろうと「ちょっとあれをやれ」になるのだ。
なにがそんなに面白いんだか、さっぱりわからない。

でも、拒否すると「アリーマは、フロントではやったらしいけどバンケット
ではやらなかった」などといういらぬ僻み嫉みを招きかねない。
エジプト人、大変明るく見えるのに、結構つまらないことにこだわるのだ。

でも、ある時期おそろしくしつこかったのに、いつのまにかパッタリと、
誰も何も言わなくなった。
エジプト人は熱するとしつこいが、冷めるとあっさりしている。

これは実は人間関係にも出る。
普通日本人の同僚同士が、何らかの理由で険悪になったら、すべて水に流して
また仲良くするなど、あまり考えられない。

でも、エジプト人の場合、一時期は仇同士のようにいがみ合った二人が、
何かのきっかけで、簡単に仲直りするのである。

また、一度いなくなって数年後に再開すると「おお、久しぶりだねえ!」と
非常に喜んでくれることもある。
いがみあった過去など、きれいさっぱり忘れているのだ。
こういうことは実に驚くほど何度もおきたので、平均的エジプト人キャラと
認定してもよろしいか(?)と、考える。

まあ、いつまでもグジグジ根に持たない、というのはエジプト人のいい所だ。
しかし、一度揉めると、かなりしつこくねちっこく険悪で陰険になる。


●「笑いのツボ」の違い

前回の話に戻るが、日本人の笑いのツボというのは、国際的にみると実は
相当変わっている。
世界各国違いはあろうが、基本的に「笑いの対象」というのは、動作であり、
言葉であり、話だ。
それは日本も同じだが、ひとつ決定的に違うのは「微妙な間」や
「一瞬の不思議な空気感」が非常に大事なことだ。

言葉や動作ですべてを埋め尽くすのではなくて、メリハリを楽しむところは、
日本独特だと思うことがある。
「動」の部分で笑うのは同じだが、「静」の部分での笑いというのは
翻訳不能の独特な世界だ。

エジプトに話を戻すと、本当に彼らの笑いのツボは、いまもって不可解な
ところがある。
先程の「ノクタ」はまだわかりやすいが、映画館などに行くと、
気分ぶち壊しになるくらい、わけのわからんところで「大爆笑の渦」が起きる。

例えば、古い話だがアーノルド・シュワルツネッガーの『ターミネーター』。
あれは、逃げ回る男女の無事を祈ってハラハラどきどきするはずなのだが、
エジプト人の観客が感情移入したのは「ターミネーター」のほうだったのだ。

シュワルツネッガーが、今度こそ機械でひき潰された・・・と安心したら、
また再生して立ち上がったシーンで場内拍手大喝采が巻き起こる。

この辺はまだ「不思議」ですむが、「ビッグ・ブルー」という
リュック・ベッソン監督の名画ではひどい目にあった。

ロザンナ・アークエット演じるヒロインが、
海に引き込まれるように深く潜ろうとする、恋人であるダイバーの命綱を、
男に懇願されて泣きながらナイフで切るシーンがある。

「見ていらっしゃい、私の愛を!」

何度見ても泣けるシーンで、胸を熱くしていたら、場内の半分ほどが
「笑った」のだ。

出かけた涙も引っ込んで、思わずあたりを見回してしまった。

大人気ない話だが、あれですっかり気分を害した私は、カイロで映画館に
近寄らなくなった。

しかし、あそこで何がおかしかったのかは、いまだに「謎」のままである。



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