2006年04月29日

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雛罌粟と母

060428ヒナゲシギリシャでは、今頃、真っ赤な雛罌粟 (ひなげし)があちこちに咲いているだろう。

あの国では初夏のころ、素晴らしく野生的で勝手放題な「お花畑」が咲き誇る。
豪勢な自然の花畑の中で、ひときわ可愛らしかったのが真っ赤な雛罌粟。
あれはきれいだったね、と母とよく懐かしむ。

母はイタリアとギリシャがいたく気に入って、二年続けて現れたのだ。
ローマの空港で落ち合って、数日ローマ界隈で遊んでからアテネに向かったものだ。
三日目くらいに「そろそろ中華か日本食でも食べる?」と、
母の体調を気遣って聞いたところ(当時「どう見えるか」は別として、60代末尾だったのだ)

「せっかくイタリアに居て、美味しいイタリアンが山ほどあるのに、
いったいどうしてそんなものを食べなければいけないの?!」

と、叱られたりしていた(やれやれ)。

アテネには夫が単身の住居を借りていた。
海のそばで、空き地はやはりお花畑になるところだった。
ヴーリャグメリという地域だ。

ちなみに、カイロは一度きたけれど、二度と来ようとしなかった。
彼女は遺跡だの観光だのというものに、あまりまともに関心がない。
だからそういう意味での面倒はないのだ、が・・・。

初夏のギリシャの花畑には、我を忘れて夢中になっていた。
日没の絶景で有名なスニオン岬も、観光客が感嘆して見上げるポセイドン神殿も、
軽く数枚記念写真だけをとってから欠伸をしていた人が、
その丘の裾に広がる、一面のお花畑に入り込んだら、とっぷり陽がくれるまで出てこず。

私が言ってもきかないので、オットを差し向けて
「お母さん、そろそろ行きましょうかね」と、さりげなく草むらから引きずり出したものだ。

二年目にきた時は、当時はまだ日本ではそう出回っていなかったオリーブの苗を担いで帰った。
しかも二本。

無駄と知りつつ「植物検疫、どうするつもり?」ときいたら、

「私のスーツケースを開けるような、失礼な係官がいるわけがないでしょう」
と、母はあたりまえに言い放ったものだ(あーあ)。

で、実際にっこり笑顔でスルーだからあきれる。
空港職員の皆さん、ご禁制品を持ち込むのはガイジンやヨレヨレのバックパッカーだけじゃないのですよ・・・。

それにしても、あの赤い雛罌粟はきれいだった。
どうせなら、アテネの家の前の空き地から、引っこ抜いて苗を持って帰ってきたかった、と本気で悔やんでいる。

そして母は「なぜそうしなかったの?!」と、相変わらず私を詰る。
だから、初夏の頃に雛罌粟の話は避けるようにしている。

さて、ついつい思い出話になってしまったが、横浜にきた最初の初夏、この雛罌粟を見つけた時はうれしかった。
私はいわゆる「大輪のポピー」も「御禁制系」のものも、特に関心はないのだが、
この小さなかわいらしいのには実に弱い。
なにやら、バブル崩壊とともに「みなとみらい」の界隈で大量に出た空き地を、ギリシャにあったような花畑に作ったことがあったのだ。

無駄遣い大魔人だった前市長の功績として、一つ讃えていいことだった、と思う。
でも、いつのまにか花畑の風景は消え去り、ただの空き地になってしまった。
どうせなら、夜中にフェンスを越えて、あの花たちの一部でも我が家に拉致するべきだった、としみじみ悲しく思っている。

しかし、この類の「野生種」というのはたくましくて、いつのまにかかなり広範囲にこぼれだねが散っていろいろな花が咲くようになった。
雛罌粟をはじめて我が家の近所で見かけた時は、植物の生命力に驚いた。
綺麗にかわいく見えて、案外しぶといのだ。
こういう花はいいなあ。

野生種で「オリエンタルポピー」というそうだ。
こぼれ種で翌年思わぬところから目を出して花をつける。

去年「盗掘」に成功して、今年また花が咲いた。
赤くはないけれど、おそらく同種だろうから、苗を母に分けなければいけない。

とにかく、一生一度だけギリシャに行くなら、初夏の今くらいを心からお勧めする次第。

あと、もしもどなたか「真紅のオリエンタルポピー」の苗なり種なりをお持ちの方がいらしたら、相応のお礼はいたしますので、是非ご一報ください。


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この記事へのコメント
ポピーと「無駄遣い大魔人だった前市長」の功績で、「 」のところ、爆笑です。同感!なんと端的に、そしてすこぶるウィットに富んだ表現なんでしょう!そのアリーマさんの言葉のセンスに参りました〜。
Posted by miriyun at 2006年04月30日 00:11
miriyunさん

あはは、ウケましたか?
ありがとうございます。

でも、一方で後任者は、松下政経塾で「朝の掃除から一日をはじめる」といった立派な躾を受けてますから、なんでもかたずけちまいます。
あそこじゃぁ「花鳥風月を愛でる」という日本の伝統的な「教養」は教えないようで・・・。

まあ、とりあえず横浜市に必要なのは「大掃除」なんで、そういう意味じゃうってつけの人材なんですけどねぇ・・・さしずめ「清潔感あふれるレレレのお兄さん」とでも呼ぼうか。
Posted by アリーマ at 2006年04月30日 18:40

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