2005年11月03日

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コーヒーと紅茶 〜 南の国の情熱のアロマ? 〜  【第34話】

●コーヒールンバ

コーヒールンバ』という歌がある。
昔はやって、最近(?)井上陽水がカバーしたので
また知られるようになった歌だ。 

「昔アラブの偉いお坊さんが 恋を忘れた あわれな男に
しびれるような 香りいっぱいの
こはく色した 飲みものを教えてあげました」

これが、世界のコーヒーの起源になった、アラブ式のコーヒー。
実際、イスラームの修行者が、精神を高揚させ眠気を払う効用を求めて
使い出したのが始まりだそうだから、
「アラブの偉いお坊さん」というのは大きく間違っていない。
エチオピア原産で、イエメン経由アラビア半島全域・・・と、各地に伝わった。

まあ、この後に「コンガ マラカス 楽しいルンバのリズム」とくるのは、
いい歌なんだし笑って許しましょう。ははは。

断食明けのバイラムセール 15%off 11/11までトルココーヒー100gパックこのコーヒーは、日本で「トルコ・コーヒー」と呼ばれるもの。
各地では「コーヒー」という名で呼ばれている。
だから「カホア(正則アラビア語)」「アホア(エジプト弁)」
「カハヴェ(トルコ語)」といったように、普通に「コーヒー」といえば
現地式のものが出てくる。



●コーヒーの淹れ方

カリタ イブリックこんな形の小さな鍋のようなもので、煮出して作る。
カップは、エスプレッソなどで使うような小さなものだ。

トルコトルココーヒー煮立って泡が立ったら、粉ごとカップに注いで、粉が底に沈むのを待つ。
上澄みだけすするので、飲む量自体は少ない。
独特の香りがするので最初は飲みづらいが、なれると癖になる。

砂糖は最初から入れて煮出すので、甘さは最初に指定する。
イタリアのエスプレッソのように、小さなカップで出てくる。
なんでもむやみと砂糖漬けにしがちな極甘エリアではあるが、
これだけは甘味がしっかりついていたほうが美味しいと思う。

アラビア語で「カホア・マズブート」、トルコ語で「カハヴェ・オルタ」と
言えば、大体現地式に「まあ普通」といった甘味の物が出てくる。
あくまで「現地の普通」なので、日本的にはかなり甘いが、
何しろ小さなカップに入ってくるものの上澄みをすするだけだ。
あくまで当時の個人的な方便だが、変に凝った注文をつけるよりも
わかりやすいので、私はとりあえず「マズブート」にしていた。

ちなみに、マズブートは「正確な、適切な」の意。
コーヒーの場合は「ちょうど良い味の」という意味合いになる。
だから、何をもってちょうど良いと考えるかはコーヒーを淹れる人間次第。
コーヒーと同量程度の砂糖を入れるのが「マズブート」らしいが、
必ずしも同じ甘さにはならないことは一応申しそえておく。

一人分のコーヒーは、ティースプーン山盛り一杯が目安。
ご参考までに。


●インスタント・コーヒーとティーバッグの紅茶

ドリップ式の日本で飲むようなコーヒーは、この十年くらいで随分浸透して、
エジプトでは何故か「アメリカン・コーヒー」と呼ばれている。

一昔前はそんなコーヒーは滅多になくて、どこに行ってもインスタントだった。
よその国はどうだか定かでないが、エジプトではインスタントは「ネスカフェ」
という名前で定着している。ネスレ社の独占市場というわけではなくて、単に
商標名がインスタント・コーヒーの代名詞になっただけだ。

最近は高級ホテルなどで、ドリップ式が常時飲める場所も増えたが、田舎では
相変わらず「ネスカフェ」の高級品イメージは強い。

一方で、お茶も二種類ある。
「茶葉で出す紅茶」と「ティーバッグの紅茶」だ。

ネスカフェが高級品、という感覚も、私にはどうも不可解なのだが、
もっと不思議なのが紅茶。
ホテルなど「高級感のある場所」で出てくるお茶は、100%ティーバッグなのだ。

現地式の紅茶は、エジプトでは「シャイ・コシャリ」などといって、
茶葉は粉状。
グラスに茶葉を入れて、上からドドドとお湯をかける。

トルコの「チャイ」の場合も大体似たようなスタイルなのだが、
やかんの形が違う。
「チャイ・ダンルック」というトルコ式お茶やかんは二段式になっている。
上のやかんに粉状のお茶を入れて暖めながら、下のやかんでお湯を沸かす。
で、沸いたお湯を上のやかんに注ぎいれると、香りの良いお茶が楽しめる
仕組みだ。
ちょっと変わった形のお茶用グラスでいただく。

映像は以下をご参照あれ。

(やかん)
チャイダンルック(トルコ紅茶用2段式ポット)Mサイズ

(グラス)
販売数400個以上!涼を感じるかわいいアジアン雑貨♪トルコ製チャイグラス&ソーサー(ピンク)

実際のところ、妙に紙臭いティーバッグの紅茶などよりも
現地式の粉茶のほうが、私にしてみるとよほどおいしく感じられるのだけれど、
なぜかホテルのラウンジなどではティーバッグに統一されている。
簡便さもあるのだろうけれど、なぜか特に紅茶に限っては「ハレとケ」の
使い分けがはっきりしている感じだ。
で、家庭に戻れば貴賎を問わず粉茶になり、コーヒーも現地式となる。

どういう過程を経てこうなったのだろう?
これは未だに解けぬ謎なのである。


●お茶の種類と社内の地位

イスタンブルでもカイロでも、勤め先では「午後のお茶の時間」が必ずあった。

ただしどちらの国でも「身分階層」によって支給されるものが違う。
白いクロスのかかった台に、ポット入りのコーヒーとお湯にティーバッグ、
陶器のカップとソーサーが出てくるのは「各オフィス」と「フロント裏」
という、言ってみれば「上級職」の職場だ。

一方で、客室清掃、エンジニアといった「実労働系」の人々には
「やかんとお茶とお茶用コップ」が供される(コーヒーは出ない)。
日本の例えばホテルのような組織内でこんなことがあったら、人種階層差別が
どうしたと大した騒ぎになりそうだが、彼の地では当たり前にそうなっている。

イスタンブル勤務のころは、現地式のお茶のほうが美味しいので、館内見回り
の途中たまに「お茶によばれ」ていた。
でも、それを同僚に言ったら、どうも複雑な顔をするのが不思議だったものだ。

その後カイロに移って、ある日たまたまポーターたちの溜まりでお茶をご馳走
になった。

で、エジプト人の上司に呼ばれた。
「そういうことは、やめておけ」というのである。

「誰とでも分け隔てなく接する態度は立派だが、中途半端にやると
逆に見くびられたり馬鹿にされたりして、仕事にならなくなるのだ。
日本というのはそれが正しい国なのだろうし、それは素晴らしいことだと思う
が、エジプトには『階級』なんていう馬鹿げたものがあるのを理解したまえ。
オマエは一応『管理職』なのだし」

別に頭ごなしに説教されたわけではなくて「一応いっておくが」というトーン
だったので、素直に聞けた。
そもそも、この上司は有能だからこういうアドバイスができるので、
いまだにこのアドバイスには感謝している。

私がもっと偉ければ、こういう行動も美談になるのだろうが、どうも逆に受け
取られたようだ。
第一、別に誰に言ったわけでもないのに、そんな話が翌日は上司に知れている
のには驚いた。
エジプト人の噂話好きは、よく知っていたつもりだが、着任早々思い知らされ
た気がした。

「郷にいれば」というけれど、必ずしもシンプルではないのである。

尚、この辺の匙加減は、本人の地位の「重量」によることを申しそえておく。
上記は「若干重みはあるけど所詮はライト級」の私の場合で、
現地の大きな組織の責任者のような「ヘビー級」の場合は、
また状況が違うだろう。

イラクのサマーワで自衛隊が受け入れられ、信頼関係を築けた背景には
「現地労働者たちと一緒に額に汗して働く」という、
一見現地では掟破りにおもえる姿勢があるのも、これまた真実なのだから。

抑えるところは抑え、奢らず高ぶらず・・・というのは簡単だけれど、
異文化との兼ね合いで実際にやるのは実に難しい。
私にとっても、おそらくは誰にとっても、
答えの出ない方程式なのかもしれない。


(アリーマ山口)


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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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この記事へのコメント
以前添乗員をしていました。ホテル業界の方にもいろいろお世話になりました。エジプト人と結婚してカイロに住んでいます。アリーマさんのブログで教えていただくことがとても多いので感謝しています。今回の「エジプトの階級社会」の問題は、住んでいるとかなり厄介です。アリーマさんには適切なアドバイスをなさる方が側におられてお幸せでしたね。これも素敵なお人柄のせいだなあと、ブログを読みながら思いました。実はアリーマさんのブログを通してお知り合いの方もできたんです。ご挨拶とお礼が遅くなってすみません。ブログでご紹介させていただいてますが、よろしかったでしょうか?これからもよろしくお願いします。
Posted by mona at 2005年11月05日 14:44
Monaさま

コメント&ブログでのご紹介、ありがとうございます。
エジプト人のご主人との結婚生活、幸せそうですばらしいですね。
結婚していらっしゃると、住んでいるだけでは経験しないようなご苦労もあることと思います。

結婚や恋愛は、今後トピックとして取り上げようと思っていますので、是非コメントなどお寄せくださいませ。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
Posted by アリーマ at 2005年11月05日 17:26

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