2005年09月28日

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アラブ・イスラーム学院 夏期講座(その3)

この集中講座では、5日かけて挨拶から基本的な自己紹介くらいまでを学ぶ。
午前中は会話、午後は文字の書き取り。

さて、私の知っているアラビア語は純正エジプト弁だ。


以前にも書いたけれど、アラビア語では「書き言葉」と「話し言葉」が違う。

書き言葉は「フスハー(正則アラビア語)」といって、新聞やニュースから国連の共用語まで、公式に使われる言葉だ。
トーンとしては固く、現代日本で候文会話をしているようなものだ、といったらかなり近いかもしれない。
NHKのラジオ講座などでやっているのもこの「フスハー」だ。

一方で話し言葉は「アーンミーヤ(口語・方言)」と呼ばれる。
各地の方言で、原則として文字にしない。
だから、各地の方言がしゃべれても、読み書きは別の話になる。
現地の人間でも、日常アーンミーヤを話しているのに、きちんと読み書きを学習していないと「アラビア語ができない」という、日本人にしてみるとなんだか不思議な状況になる。

で、各国各地の方言というのは実に様々で、特にエジプト弁(アーンミーヤ・マスル)というのは、音のイメージがまるで違う。
自分でもかなり訛っているのは自覚していたが、講座に参加して「エジプト弁訛り」の強烈さを改めて感じた。
いい勉強になったが、結構恥ずかしくもあった。

エジプト弁が、アラビア語圏でも結構変わった方言らしいのは、滞在時の経験からもよく知っていると思っていた。
なにしろ、エジプト以外の国でとりあえず何かしゃべると、まず返ってくる反応が「笑い」なのだ。

学生時代の友人で、サウジ人のIくんによると
「エジ弁、ダサイっしょ」
となる(キミの日本語もパーフェクトな「北海道弁」なんだがね)。

エジプト弁はよく通じる。
アラビア語圏で一番よく通じる方言かも知れない。
だから、相手は笑うにせよ、言いたい事はわかってもらえる。

実は、エジプトのドラマやテレビ番組が、アラビア語圏一帯に広く輸出されていた時代があったのだ。
しかも、そういう番組の大半が「お笑い系」で、ちょっと古めかしいコメディーだったそうだ。

日本でいえば、第一次お笑いブームで、吉本興業が大阪弁を全国区に押し上げたようなものだろうか。

私の弟も、カイロに遊びにきて3ヶ月ばかり拙宅で居候していったが、その時覚えた片言のアラビア語をモロッコでしゃべったら、運転手にバカ受けしたそうだ。
彼は「ぼられまい」と構えて、とりあえずうろ覚えのアラビア語を必死にしゃべったのだけれど、あんまり笑うんで「レー・ケダ?」とたずねた。

「レー=何故、ケダ=そんなような」だが、二語とも純然たるエジプト弁。
当然、再び爆笑を呼ぶ。
「昔のテレビのお笑い番組みたい・・・」と、
息も絶え絶えに運転手は英語で説明してくれたそうだ。

何故そんなに可笑しいのか?
それが、今回講座に参加してよぉくわかった。

語彙が独特なのもあるが、何しろ音がつぶれ気味で、語尾が粘っこいのだ。
あと、長年疑問だったのだが、正則アラビア語には「エ」という音がないのを知った。
「ヤー」という、アルファベットの「y」にあたる文字があって、これを「イ」や「エ」と読むのだが、アラビア語には「イ」しかなかったはずだよね・・・とどこか不思議に思っていたが、これは「エジプト弁現象」だったのである。

エジプト弁では「何?」が「エー?」、「何故?」が「レー?」
という具合に、「エ」音が非常に多いのだけど、これが独特らしい。

教室で
「アナー・ヤバネイヤァ」(「私は日本人です」の女性形)と言ったら、
先生苦笑混じりに

「アナー・ヤバニーヤー」と、軽やかに直してくれたのであった。

確かに、品よく軽やかに聞こえる。
東京山の手風のしゃべり方が「スカシてる」というイメージ、
なんだか実感としてわかった。

そういう思い込みもあるのだろうが、金曜日のアザーンはエジプトで聞きなれたものよりも、ずいぶん軽やかに聞こえた。
この学院には立派なモスクがあって、金曜日の昼には近隣の大使館員などが大勢礼拝にやってくるのだ(アザーンは「礼拝の始まり」を告げる呼びかけ)。

で、講座の間、数字を発音しても、単語を発音しても、私が口を開くと妙に粘つく感じがしてならなかったのだ。
いけなくはないんだろうが不思議だった。

この学院の日本人スタッフK先生と、講座終了時に話す機会があった。
先生もエジプトに何年か仕事で滞在したことがあるのだが、
「エジプトくらいフスハーを軽んじている国はありません」と慨嘆されていた。

確かにエジプト人の同僚知人を見ている限り、読み書きはできるにしても、あまりフスハーの勉強を大事にしている印象はなかったし、実際「道でフスハーで話すと、尊敬されずに笑われるのはエジプトくらいです」とのこと。
確かに、本で覚えた言葉を使おうとしたら「その表現は固すぎるから」と直されたことがあったっけ。

「だから、エジプトでアラビア語を覚えてしまった人がフスハーを勉強すると、非常に苦労されるケースが多いようですね」

・・・確かに、ごもっともです・・・。

このように、熱暑で煮溶かされたような心身状態ながら、
いろいろと新しい発見があって面白かった。

以前にも御紹介したが、この学院のHPは、アラビア語学習用にも非常に充実していて、将来的にはオンラインで独習可能なくらいのコンテンツ充実を目指しているとやら。
立派な志に頭が下がる。

http://www.aii-t.org/j/maqha/

しかし「軽くて高くてうねりの少ない発音と話し方」ていうのは、
英語でも日本語でもドイツ語、そしてアラビア語でも「上品」で「知的」というイメージになるんだね・・・と、ふと思った。

人類の音感て、世界共通なのか知らん?

「ちがうぞ」という例があったら、是非お知らせください。

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