2005年07月19日

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【第19話】 中東酒事情 其の一 〜エジプト酒話 懐かしの『ステラ』〜

●マダーラのアリーマ

季節柄も考えず「宗教」というヘビーな話題に、
二回も続けてタックルをかけてしまった。


この間、湿気は体内で飽和点に達しており、
行きつけの整体でも「わ、これはひどいねー」と言われる始末。
シケてフニャケた煎餅のような体(?)に成り果てていたのである。

で、背中にべたべたとカップを貼り付ける施療を受けて、
背中が一面「まだら牛」になってしまった。
「ワタシはマダーラのアリーマ」などと意味不明なことを口走りながら、
先週の原稿のあとは熱まで出した。
それほどのもんか?と仰る向きには、お詫び申し上げます・・・(??)。

「罰当たり」という言葉が脳裏をよぎったが、強いて考えないことにする。

で「次回からは、もうちょっと清涼感のある話を」とお約束した。
季節的清涼感を、前向きかつ真剣に考慮すると、何を置いても「お題」は

「ビールったらビール!」

ということになろう。
それ以外、あるわけないではないか!!
某E主筆殿下の、大きく頷く姿が見えるのは、夢まぼろしではなかろう。

プシュ、と缶を開けて、さあ行くぞ!

→尚、今回サイトのご紹介もするので、お供は「キリン一番搾り」。
本当はラガーのほうが好き。もっと好きなのは「ハートランド」。
あんまり売ってないんですけど。


●懐かしの『ステラ』


エジプトにいる間中、何かにつけてお世話になっていたのが『ステラ』だった。
国産のビールだ。
「十年余り苦楽をともにした」といってもよい。
エジプトをしばらく離れていることがあると、
戻って最初の儀式は、とりあえず手近なバーで「ステラ一本!」だった。

この間、ドイツに一年、イスタンブルに一年半と
「出稼ぎ(?)」に出たりしたこともあったが、
なんだかエジプトにはたまに「帰って」いた。
ドイツの時は仕事の絡みで、イスタンブルの時は
「当時交際中→婚約者→別居中の夫」と変転を遂げたMr.ヤマグチに会いに。

で、横浜に単身赴任状態で異動して、夫が一年後にやはり異動になって
帰国するまでは「夫と家族(猫4匹)に会うため」と、
ほぼ11年の間、カイロを軸にあっちこっちする生活だった。

でもそれは「今思ってみれば」ということであって、
本人はその都度「もうエジプトは離れる」という強い決意のもとに
他の国に移住していたのだ。
「お別れ会の女王」の異名すらとった。
「今度こそ本当なんでしょうね」と言われながら、
大量消費したのは、その都度「ステラ」だ。

味はどうかというと、けっして上等とは言いがたい。
でも、地元のビールというのは不思議なもので、
エジプトで飲むと案外いけるのだ。
3.5%というアルコール度の低さと、妙な酸っぱいような水っぽさが、
乾燥した土地の水代わりにちょうど良かったのかもしれない。

こう書くと、いかにもまずそうだが、本当にまずい。
日本で見つけたら飲んでみよう、と思う人がいたら、
そのチャレンジ精神だけに拍手だけは送る・・。

以前よく行ったバーで、マスターに「酒屋の営業がきて、エジプトのビールを
置かないかといってるんだけど、どう?」と聞かれて
「そんなもんが視界に入ったら、二度と飲みに来ないから」
と一発却下したこともある(その店、悲しいことにつぶれちゃったが)。

ステラビール以前はこんなラベルでした。これは実はTシャツ。もうヨレヨレで、普通なら雑巾だけれど…ステラれないんです…(>_<)


●ビールの国ドイツ

ビールのグラス『ミュンヘン名物ヴァイス・ビアのグラス』です。ドイツは、ビールによってグラスの形まで違うのであります・・・。


ミュンヘンに一年住んでいた頃、
たまにエジプトに戻って飲む「ステラ」が奇妙においしく感じられたのは、
不思議な感覚として今でも思い出すことがある。

世界的に知られたビールの街で、
日々選り取りみどりのビール三昧生活(わっはっは!)を送っていた。
本当に水より安かった。

でも、どうしてか「エジプト帰国の儀式」でステラを飲むたび、
脊髄反射的に「うまい!」と思っている自分が不思議だった。
「土地のもの」というのは、
時々こういう理屈では説明できない現象を引き起こす。

ドイツというのは、まことに頑固なビールの国だ。
町の数だけ違うビールがあるといってよい種類の多彩さ、
製造法の様々を追いかけるだけでも、
ビールは正しくこの国のものだ、と実感できる。

たとえば、私が大好きな「アルトビア(注1)」という、デュッセルドルフ名物
のビールがあるのだが、同じラインラント地方で隣町のケルンやボンでは、
お見事なほどメニューから消えるのだ。代わりに、小ぶりのグラスに入った、
さわやかな「ケルシュ」というビールがある、といった具合。

逆に、デュッセルドルフでは「ヴァイス・ヘーフェ(注2)」は意味をなさない。
まあ、サービスの担当者が勉強熱心だったり、バイエルン出身だったりすれば
「お客様、それは・・・」と説明してくれるかもしれないけれど、
さもなくば「は?」という顔をされて終わり、だと思う。

旅行する方のために記すと、ドイツの地ビールは一期一会だ。
「土地のビール」は、その土地にしかない。
ビール飲み歩きが目的の場合は、その夜に泊まった町のビールを飲み過ごすと、
もう二度と出てこないことがある。ご注意を。

何しろ、16世紀に成立した『ビール純粋法』なる法令が、
現在にいたるまでもきちんと有効な国である。
「ビールには麦芽・ ホップ・ビール酵母・水以外のものを
使用してはならない」というものだ。
発泡酒なんて、きっぱりと法律違反。
ここはドイツのえらいところだ、と思っている。

注1:大好物の軽めの黒ビール。

注2:イーストが下に淀んで沈む、御当地名物濁りビール。
ちょっと酸味がある。底が細くなったグラスで飲む。
日本でも一時期「ヴァイツェン」といって似たようなものが売っていた。


●ビール発祥の地、エジプト

ビール醸造について、最古の記録は5000年前のメソポタミアのものだが、
エジプトにも同様にあったそうだ。ビール醸造5000年の歴史だ。

紀元前2500年ごろから500年ほど続いた「古王国時代」(ピラミッドが
造られた時代、といえばわかりやすかろうか)。そして「中王国時代」を経て
ツタンカーメンやラムシス二世に代表される「新王国時代」が、
ざっくりいうと紀元前1500年から1000年ごろにかけて栄える。

このそれぞれの時代で、ビールの醸造技術は違ったという。
壁画には、酔っ払って楽しく盛り上がったり、挙句に吐いたりする人々の姿が
残っている。
当初はアルコール濃度も3%程度と低かったが、キリンビールの研究で
10%くらいのものを醸造する技術が発達していったことがわかった。

かの吉村作治教授の協力のもと、
キリンビールが「古代エジプトビールの再現プロジェクト」をと行った話は、
あちこち報道されたから記憶にある向きもあるだろう。
詳しくは、以下の二つのサイトをご参照いただきたい。

http://homepage2.nifty.com/beeroyaji/egypt.htm
http://www.kirin.co.jp/daigaku/o_egypt/index.html

単純に言うと、
パンに酵母などを加えて発酵させる形で、酸味のあるビールだったそうだ。
ステラに不思議な酸味があるのは、それと何か関係あるのだろうか?
たぶん、ないだろうけど・・・。

でも、ビールの質自体は、どうも5000年前からしても、
あんまりレベルアップしていないような気がする。
イスラム教の国となり酒が禁忌となった時代に、
一度廃れ去ったのかもしれない。

また、古代エジプトの食文化などは、以下のサイトも面白い。
ご参考までに。

http://www.enjoy.ne.jp/~yagi3189/egypt/food/index023.html
http://www.enjoy.ne.jp/~yagi3189/egypt/index02.html

なんだか湿度が上がってきたので、清涼感維持のため
サワヤカに次回に続く!

(2005/07/14配信)

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この記事へのコメント
その不味いビールを飲んでみたい。彼の地で。
Posted by さら at 2005年07月19日 21:00
アリーマさん、リンクメールありがとうございました。
ブログ拝見させていただきました。

残念ながらオヤジは再現されたエジプトビールを飲む機会はありませんでしたが、今は日本で初めて作られたビールの再現プロジェクトが行われています。中東ネタとは全く関係ありませんが・・・

では。
Posted by ビール飲みオヤジ at 2005年07月19日 23:57
さら様

是非飲んでみてください!
土地のものの不思議って、あるんです。

実際に行かれる時はご連絡くださいね。
Posted by アリーマ at 2005年07月20日 01:25
ステラビールも以前に比べだいぶ改良されたと聞きますが…他の中近東の国の酒事情はどうなのでしょうか?ちなみにモロッコは酒飲み天国!ビールもワインもヨーロッパレベルです。イスラエルは、国産ビールは「ないよりはまし」、というようなものでしたが、バーなどで「生」が飲めるのが最高!
Posted by 蟻破産 at 2005年07月21日 07:16
エジプトに行った時ステラ飲みました。美味しかったです。
ムスリムは飲酒しないのにアルクホールについて異教徒に寛容ですね。友人がザマレクに住んでいて飲むばっかりじゃ悪いと思いシェッターシュリン沿いの酒屋さんでケースで買いました。ちょっとすっぱくて少し古いのかと思い売れないんだと納得していましたがそういう味なんですね。沖縄で飲むオリオンビールとおんなじで、気候が違うと美味しくありません。もう一度カイロでステラ飲みたいです。パフレイヤオアシスから砂漠キャンプに行ったときの月夜のステラも忘れられません。ハムディさん元気かな、また会いたいです。
Posted by ハビー at 2005年07月22日 02:09
蟻破産さま
・・・すごいお名前ですね・・・ともあれ、コメントありがとうございます。
モロッコは連載一回目にちょこっとだけ顔を出しますが、学生時代に行きました。確かにビールは悪くなかったです。20年前のことですから、今はもっと良くなっているのでしょう。エジプトよりもはるかに酒事情に恵まれていそうです。エジプトはこの数年で飛躍的によくなったとは聞いています。

ハビーさま
そう、ステラ・ローカルの特徴に「ビンによって味が違う」というのがあります。どうもケース単位で違うようです。基本的に妙にすっぱいのですが、実際古くて酸っぱいこともあります・・・でも、砂漠の月夜のステラなんて、よさそうですね。
Posted by アリーマ at 2005年07月22日 21:25
蟻破産さま

モロッコのお酒、というお題であれこれ調べたところ、おかげさまで大変面白いモロッコ関係のサイトに行き当たりました。

リンクも張りましたので、どうぞご参照ください。
Posted by アリーマ at 2005年07月23日 02:19

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