この間、湿気は体内で飽和点に達しており、
行きつけの整体でも「わ、これはひどいねー」と言われる始末。
シケてフニャケた煎餅のような体(?)に成り果てていたのである。
で、背中にべたべたとカップを貼り付ける施療を受けて、
背中が一面「まだら牛」になってしまった。
「ワタシはマダーラのアリーマ」などと意味不明なことを口走りながら、
先週の原稿のあとは熱まで出した。
それほどのもんか?と仰る向きには、お詫び申し上げます・・・(??)。
「罰当たり」という言葉が脳裏をよぎったが、強いて考えないことにする。
で「次回からは、もうちょっと清涼感のある話を」とお約束した。
季節的清涼感を、前向きかつ真剣に考慮すると、何を置いても「お題」は
「ビールったらビール!」
ということになろう。
それ以外、あるわけないではないか!!
某E主筆殿下の、大きく頷く姿が見えるのは、夢まぼろしではなかろう。
プシュ、と缶を開けて、さあ行くぞ!
→尚、今回サイトのご紹介もするので、お供は「キリン一番搾り」。
本当はラガーのほうが好き。もっと好きなのは「ハートランド」。
あんまり売ってないんですけど。
●懐かしの『ステラ』
エジプトにいる間中、何かにつけてお世話になっていたのが『ステラ』だった。
国産のビールだ。
「十年余り苦楽をともにした」といってもよい。
エジプトをしばらく離れていることがあると、
戻って最初の儀式は、とりあえず手近なバーで「ステラ一本!」だった。
この間、ドイツに一年、イスタンブルに一年半と
「出稼ぎ(?)」に出たりしたこともあったが、
なんだかエジプトにはたまに「帰って」いた。
ドイツの時は仕事の絡みで、イスタンブルの時は
「当時交際中→婚約者→別居中の夫」と変転を遂げたMr.ヤマグチに会いに。
で、横浜に単身赴任状態で異動して、夫が一年後にやはり異動になって
帰国するまでは「夫と家族(猫4匹)に会うため」と、
ほぼ11年の間、カイロを軸にあっちこっちする生活だった。
でもそれは「今思ってみれば」ということであって、
本人はその都度「もうエジプトは離れる」という強い決意のもとに
他の国に移住していたのだ。
「お別れ会の女王」の異名すらとった。
「今度こそ本当なんでしょうね」と言われながら、
大量消費したのは、その都度「ステラ」だ。
味はどうかというと、けっして上等とは言いがたい。
でも、地元のビールというのは不思議なもので、
エジプトで飲むと案外いけるのだ。
3.5%というアルコール度の低さと、妙な酸っぱいような水っぽさが、
乾燥した土地の水代わりにちょうど良かったのかもしれない。
こう書くと、いかにもまずそうだが、本当にまずい。
日本で見つけたら飲んでみよう、と思う人がいたら、
そのチャレンジ精神だけに拍手だけは送る・・。
以前よく行ったバーで、マスターに「酒屋の営業がきて、エジプトのビールを
置かないかといってるんだけど、どう?」と聞かれて
「そんなもんが視界に入ったら、二度と飲みに来ないから」
と一発却下したこともある(その店、悲しいことにつぶれちゃったが)。
以前はこんなラベルでした。これは実はTシャツ。もうヨレヨレで、普通なら雑巾だけれど…ステラれないんです…(>_<)
●ビールの国ドイツ
『ミュンヘン名物ヴァイス・ビアのグラス』です。ドイツは、ビールによってグラスの形まで違うのであります・・・。
ミュンヘンに一年住んでいた頃、
たまにエジプトに戻って飲む「ステラ」が奇妙においしく感じられたのは、
不思議な感覚として今でも思い出すことがある。
世界的に知られたビールの街で、
日々選り取りみどりのビール三昧生活(わっはっは!)を送っていた。
本当に水より安かった。
でも、どうしてか「エジプト帰国の儀式」でステラを飲むたび、
脊髄反射的に「うまい!」と思っている自分が不思議だった。
「土地のもの」というのは、
時々こういう理屈では説明できない現象を引き起こす。
ドイツというのは、まことに頑固なビールの国だ。
町の数だけ違うビールがあるといってよい種類の多彩さ、
製造法の様々を追いかけるだけでも、
ビールは正しくこの国のものだ、と実感できる。
たとえば、私が大好きな「アルトビア(注1)」という、デュッセルドルフ名物
のビールがあるのだが、同じラインラント地方で隣町のケルンやボンでは、
お見事なほどメニューから消えるのだ。代わりに、小ぶりのグラスに入った、
さわやかな「ケルシュ」というビールがある、といった具合。
逆に、デュッセルドルフでは「ヴァイス・ヘーフェ(注2)」は意味をなさない。
まあ、サービスの担当者が勉強熱心だったり、バイエルン出身だったりすれば
「お客様、それは・・・」と説明してくれるかもしれないけれど、
さもなくば「は?」という顔をされて終わり、だと思う。
旅行する方のために記すと、ドイツの地ビールは一期一会だ。
「土地のビール」は、その土地にしかない。
ビール飲み歩きが目的の場合は、その夜に泊まった町のビールを飲み過ごすと、
もう二度と出てこないことがある。ご注意を。
何しろ、16世紀に成立した『ビール純粋法』なる法令が、
現在にいたるまでもきちんと有効な国である。
「ビールには麦芽・ ホップ・ビール酵母・水以外のものを
使用してはならない」というものだ。
発泡酒なんて、きっぱりと法律違反。
ここはドイツのえらいところだ、と思っている。
注1:大好物の軽めの黒ビール。
注2:イーストが下に淀んで沈む、御当地名物濁りビール。
ちょっと酸味がある。底が細くなったグラスで飲む。
日本でも一時期「ヴァイツェン」といって似たようなものが売っていた。
●ビール発祥の地、エジプト
ビール醸造について、最古の記録は5000年前のメソポタミアのものだが、
エジプトにも同様にあったそうだ。ビール醸造5000年の歴史だ。
紀元前2500年ごろから500年ほど続いた「古王国時代」(ピラミッドが
造られた時代、といえばわかりやすかろうか)。そして「中王国時代」を経て
ツタンカーメンやラムシス二世に代表される「新王国時代」が、
ざっくりいうと紀元前1500年から1000年ごろにかけて栄える。
このそれぞれの時代で、ビールの醸造技術は違ったという。
壁画には、酔っ払って楽しく盛り上がったり、挙句に吐いたりする人々の姿が
残っている。
当初はアルコール濃度も3%程度と低かったが、キリンビールの研究で
10%くらいのものを醸造する技術が発達していったことがわかった。
かの吉村作治教授の協力のもと、
キリンビールが「古代エジプトビールの再現プロジェクト」をと行った話は、
あちこち報道されたから記憶にある向きもあるだろう。
詳しくは、以下の二つのサイトをご参照いただきたい。
http://homepage2.nifty.com/beeroyaji/egypt.htm
http://www.kirin.co.jp/daigaku/o_egypt/index.html
単純に言うと、
パンに酵母などを加えて発酵させる形で、酸味のあるビールだったそうだ。
ステラに不思議な酸味があるのは、それと何か関係あるのだろうか?
たぶん、ないだろうけど・・・。
でも、ビールの質自体は、どうも5000年前からしても、
あんまりレベルアップしていないような気がする。
イスラム教の国となり酒が禁忌となった時代に、
一度廃れ去ったのかもしれない。
また、古代エジプトの食文化などは、以下のサイトも面白い。
ご参考までに。
http://www.enjoy.ne.jp/~yagi3189/egypt/food/index023.html
http://www.enjoy.ne.jp/~yagi3189/egypt/index02.html
なんだか湿度が上がってきたので、清涼感維持のため
サワヤカに次回に続く!
(2005/07/14配信)
ステラビールも以前に比べだいぶ改良されたと聞きますが…他の中近東の国の酒事情はどうなのでしょうか?ちなみにモロッコは酒飲み天国!ビールもワインもヨーロッパレベルです。イスラエルは、国産ビールは「ないよりはまし」、というようなものでしたが、バーなどで「生」が飲めるのが最高!