2005年05月05日

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【第9話】〜愛し懐かしトルコとトルコ料理編 其の二〜 極私的トルコ餃子への愛着と執着と妄執(あ〜あ)

【もくじ】

・今度こそトルコのお料理話
・世界三大料理の謎 〜 トルコ料理のツーリスト評定は?〜
・ヨーグルトの功罪
・極私的ナンバー・ワン 〜マントゥ(トルコ餃子)〜

● 今度こそトルコのお料理話

書きます、書きますといい続けて数回。
今度こそ、トルコのお料理の話。
狼少年ならぬ狼中年の名を、この辺で返上しなければいけない。

イスタンブルは歴史ある王都だ。
そして、そのように、千年以上にわたって栄える王都には必ず多種多様な美食が存在する。
頑なに美食を不徳とする、イギリスの王都のような場合は例外だけれども。

以前にも書いたが、イスタンブルでの食生活はまことに充実したものだった。
道端で売っているサンドイッチや多種多様なジャンク・フードの専門店といった、一食100円か200円くらいで済むようなチープ系から、高級レストラン、シーフード専門店まで、今思い出しても目が潤んでくるような「美味いもの尽くし」の街だ、と私は思っている。

今までナンノカンノと先延ばしにしたのも、思い出せば思い出すほど拷問にあっているような心理状態になるからかもしれない。事実「さあ、トルコのお料理!」ときた途端に「あれが食べたい、これが食べたい・・・」が始まってしまった。

悲しい。羊肉くらいなら救いの神も出るが、私が真摯に食べたいアレコレは、トルコに行かなきゃだめなのだ。
アラジンの魔法のランプでも持っていない限り「じゃあ、ちょっとイスタンブル行って、マントゥとイシュケンベ・チョルバスでも食べようか」などという話はない。
せいぜい家人が「トルコ料理、いく?」と誘ってくれるくらいだ。

●世界三大料理の謎 〜 トルコ料理のツーリスト評定は?〜

世界三大料理といえば、フランス料理、中華料理、そしてトルコ料理、といわれている。
確かにトルコ料理のバリエーションと、手のかけ方、食材の豊富さ、食にかける情熱などを考えれば、間違いなくそのとおりだと思う。

しかし、しかしだ、この「伝説」が意外に足を引っ張るところもある。

以前に某旅行代理店の参加者アンケートを見せてもらった話を書いた。
エジプト旅行についてのセミナーを数回と、トルコとエジプトについての小冊子刊行に協力した時のことだ。既にご紹介したように、ツアー中のエジプト料理の評定ははおおむね3〜4。5まで結構あって驚いたものだ。

で、これがトルコ・・・ときて、絶句した。
いいところが4、ひどいと1や2までがある。
平均は3かそれ以下である。

「はぁ?!」と、何度読み直しても同じだ。
何をどうしたら、トルコの料理評定がエジプト以下になるのだ?!

で、あちこち調べたり聞いてみたりして、わかったことがある。

1. トルコのツアーは地方から始まるケースが多い。
1. 地方の場合「食事は家庭でするもの」であって、レストランは大抵の場合観光客向けとなる。当然、出てくるものに作り手の強い熱意はこもっていない。
1. 地方によっていろいろなバリエーションはあるものの、グルメの王都はイスタンブルであって、イスタンブルなど大都市とその他の地方都市では、『食』への執着が違う。
1. イスタンブルにしても、やっぱり最高なのは家庭料理だ。
1.そもそも、この「世界三大料理」を言い出したのはヨーロッパの人間である。当然日本人と味覚は違う。

この「トルコは世界三大料理の一つ」という評価の故に「美味しいものを食べたい!」という期待感に満ちてくる旅行者が少なからずいるのでもある。
以前も書いたが、完全に食べるものは絶望的、と思い込んで彼の地を踏むエジプトの場合と、スタートラインが違う。

また、トルコの地方にでると食べるもののレベルはがたんと落ちる。
イスタンブルのきらびやかさが嘘のようだ。
かつて「世界三大料理」の地と呼ばれたところは、スラブ、欧州、アジア、そしてアラブの交差点に位置したイスタンブルなのである。そして、歴史ある王都がすなわちトルコ全域ということにはならないのだと思う。

さらに突っ込んで考えると、トルコ料理はエジプト料理よりはるかに手がかかり、凝っているのではあるが、その凝り方が今ひとつ日本人の口に合わないようにも思えるのだ。

●ヨーグルトの功罪

特に決定的にだめなのは、ヨーグルト味ではないかと思う。日本人にとってヨーグルトというのは単なる健康的なデザートだが、トルコでは「ヨーグルトを使った料理」というだけで一冊本ができるくらいのもので(実際日本でさえ出ている)、基本的な「調味料」なのである。

飲み物にも「アイラン」という油脂を抜いてさらりとさせ、塩味を軽くつけたヨーグルトドリンクがあって、食事中「お酒を飲まない人たち」が飲む。私は邪道を承知でラク→アイラン→羊肉というラウンドを楽しんでいた。羊とヨーグルトも、これまた相性が良い。
あと、ごくごく庶民的なケバブ屋(「オジャクバシ」という)に行くと、ラクのチェイサーにビーツのジュースが出てくる。これはトルコ人でも好き嫌いが激しく分かれる代物だが、私は大変気に入っていた。羊肉、ラクのコンビネーションに、更に磨きをかける名脇役だ。

この一文を読んだだけで「げ、ナニそれ」と思う読者もいると思う。
このように、食べ物の好みは人それぞれ。
世界各地でも美味のスタンダードは違うのである。

こんなことを一例として、トルコ料理独特の精緻さが、基本的に極端な香りや味を好まない日本人の口に合わないことはあるだろう。
まあ、日本人だって納豆やら塩辛やらを食べているのではあるが。

● 極私的ナンバー・ワン 〜マントゥ(トルコ餃子)〜

ヨーグルトは実際、ソースに、サラダに、肉料理の下味に・・・と多種多様な形で使われている。

冒頭に出てきた「マントゥ」もヨーグルト料理だ。トルコ風のミニ餃子で、形は一般にピラミッド状で小指の先くらいの大きさ(バリエーションはいろいろ)だが、茹で上がった上にヨーグルトをかけ、ニンニク入りのピリッと辛いソースをかけて食す。希望で胡桃をトッピングすることもできる。

マントゥという名前は、中国のマントウ(饅頭)につながる語感がある。
多分どちらかが起源で、シルクロード経由で変形していったものではないか、などと想像すると楽しい。さらに西に行くとイタリアのラビオリがある。東に餃子、饅頭、包子(パオズ)、西にラビオリ。起源までさかのぼれなかったけれど、今度調べてみることにする(と、ちゃっかり宿題にするのだった)。

トルコ料理多々ある中で、私の輝ける第一位はこの「マントゥ」である。
イスタンブル市内でも「どこでもよい」というものではなく、「これは!」というものには、日本で抜群の水餃子に出会うのと、ほぼ同じくらいの確率でしか遭遇しない。

私の思い込みかと思ったら、ある日トルコ人の同僚たちが「どこのマントゥ屋が一番か」論争を熱く繰り広げていた。「うちの近所にさぁ」と仲間に入ろうとしたら「日本人の皮をかぶったエジプト人のオマエにはわかるまい」とあっさり却下されたのだ。ふん!せっかく教えてあげようと思ったのに。

トマトソースをかけた、これこそイタリアのラビオリのようなものもある。こちらも好きだが、偏愛するところまでは行かない。これはレストランなどでも比較的よく見かける。
ヨーグルトかけのものは専門店のみで、本当においしい店はマントゥ以外のメニューなしである。

昔住んでいた家の近くには極上のマントゥ専門店があり、出前もしてくれた。
界隈の住人で出前注文をよこす日本人は私だけだったようで、第一声のご挨拶だけで、名乗りもせぬうちから「おお、はいはい。今日は何人前?」と、日本の宅配ピザなどかなわぬ効率のよさだった。

実は「餃子なんだから、辛子醤油が良いのではないか」と思いついてやってみたことがある。「ニンニク抜き、ヨーグルト抜き」というオーダーを理解してもらうのに多少苦労したが「例のいつもの日本の女の子(当時)が、何か変わったことを考えているらしい」と賢く理解してくれて「ヨーグルト抜きでも、値段は同じよ」と届けてくれた。

私は水餃子の類には目がないのだ。海外にいるときは、自分で皮を打って、豚肉の塊をたたいて、自家製水餃子を作っていたくらいだ。仕事で頭にきた時など、なぜか無性に食べたくなったもので、夜遅く小麦粉の塊に拳をくれている私の姿を見るにつけ、家人は「今日は何かあったの?」と尋ねたものではあった(空腹をこらえて、に違いない)。

で、辛子醤油マントゥ。
結果はNG。まあ、悪くはないけれど、やはりヨーグルトとの絶妙なコンビネーションには勝てない。確かに水餃子にヨーグルトをかけても美味しくないよね、と妙に納得したのを覚えている。

というわけで、マントゥはまず滅多なことでは日本でありつけない。
一度だけ、20名ほどのランチ・パーティーで、都内のお気に入り某トルコ料理店を借り切った時、おそるおそるトルコ人オーナー兼シェフのU氏に言ってみたら「そのくらいサービスで追加してあげる」と、気持ちよく出してくれたことがあるくらいだ。
あれはどう考えても手のかかる一品。追加料金覚悟だったのだが、トルコの人のホスピタリティー、日本でも健在である。

もっとも、横浜の某トルコ料理屋で、それをトルコ人のウェイターに言ったら「いいなぁ、日本人は。僕がUさんにそんなこと言ったら『ワガママいうんじゃない!』って叱られて終わりよ!」とのことではあった。

と、いうことで、「トルコのお料理」はまだ続く。
冒頭の「イシュケンベ・チョルバス」も、次回のお楽しみ(?)ということで。

それにつけても、ああ、マントゥが食べたい!!
あの店はまだ、健在なのだろうか?

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トロイ最寄駅:日ノ出町 / 桜木町料理:トルコ料理採点:★★★★☆一人当たりの支払額(税込み):1,000円〜3,000円用途:夕食 桜木町駅そばのこじんまりしたレストラン。 前菜などはしっかりにんにくが利いててうまい。 料理は家庭料理風。 全体に雰囲気のいい店で...
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この記事へのコメント
さらに連載延長してください!!
Posted by ダモクレス at 2005年05月05日 21:46
反応が鈍くても面白く読んでいる人は多いんじゃないか、と想像しています
Posted by oldseaman at 2005年05月05日 21:47
いつもお疲れ様です。
楽しく読ませていただいてます。

さて質問があります。観光ですが、トルコに行ったことのある
友人に聞いた話ですが、どこで料理を頼んでも、冷めていて
暖かい物が出てこなかったので印象が悪いと言っておりました。

この友人どこの国に行っても観光客向けではなく住民向け食堂に
行くことをポリシーとしているので、観光客用だからというわけ
では無いと思われます。

何か考えられることありますか?

教えてちゃんでもなんですので一つ情報を。
池袋にあるモンゴル料理屋さんおいしいです。中東ぶらぶら読んで
羊肉が食べたくなって行ってきました。

これからもがんばってください。楽しみにしています。
Q
Posted by きゅう at 2005年05月05日 22:46
「電波の届かない日本某地」より本日戻りました。実は熊本県球磨郡の、とある山中に滞在していたのです。「夫の実家」です。ミッションは「嫁」です。空気も水も人の気持ちもきれいで、命の洗濯ができます。その上、温泉つき(^^)

不在中、いろいろとコメントをありがとうございます。
誠に嬉しいことです。

連載の回数は別に決まっていません。とりあえず25回を『目安』ということにしているので、インシャアッラーまだ続くかもしれません。だから、エンリケ殿下に怒鳴り込んだりしないでくださいね・・・。
(続く)
Posted by アリーマ at 2005年05月08日 04:25
Qさまのご質問について
ごめんなさい、と最初に申し上げます。
ご友人がどのようなところでどのように行動されたか想像がつかないので、なんとも言えません。ただ「住民向け食堂に行くことをポリシーとしている」ということですが、日本の定食屋さんなどにも大きく当たり外れがあるように「どこでもなんでも」ということではないのです。日本全国が「旨いラーメン屋」を探しまくっているような状況を考えてもいいでしょう。「冷めた料理」というのは、本来温かく出すべきものなのか、冷菜だったのかというところも不明です。実際トルコには冷えてもよし、温かくても良しという料理が前菜にはあります。ですから、現状の中で考えられるのは「運が悪かった」か「トルコ料理が口に合わなかった」かであろうか、と思われます。
この程度しかお答えできなくてごめんなさい・・・。
Posted by アリーマ at 2005年05月08日 04:48
PS:ところでQさま、その『池袋のモンゴル料理』というのは、なんと言うお店なのでせうか・・・
Posted by アリーマ at 2005年05月08日 05:18
アリーマ様、お疲れ様でした。

聞いた話なのでこちらも明確でなくすいません。
まあ食事以外でもトルコでの悪い思い出が多い
ようでしたので、国自体が口に合わなかったのか…。

ということでモンゴル料理のお店ですが、
 モンゴル行宮料理『故郷』
というところです。おかみさんも愉快な人で、
楽しくおいしい時間を過ごせました。
お酒も色々で(^o^)
Q
Posted by きゅう at 2005年05月08日 18:59
きゅう様
モンゴル料理のお店情報、ありがとうございます。そのうち一度行ってみます。
実は熊本出立前に次号の原稿をあげて、内容が「羊責め」なので、いまや「羊食いたい病」が再発して辛い思いをしているのです・・・ううう、羊食べたい。

トルコ旅行は確かに面倒くさいところがあるかもしれません。観光客目当ての客引きなどが大変しつこいのです。エジプトもうるさいですが、トルコの比ではありません。あちこちで不満の声があがっているようですから、その辺の話もそのうちに書こうと思っています。特に旧市街あたりは在住当時の私もうっとうしいから寄り付きたくないくらいでした。だから御友人の気持ちもわからないではありませんよ。
ともあれ、今後もご支援、よろしくお願いいたします。
Posted by アリーマ at 2005年05月08日 20:04

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