2005年04月15日

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【第6話】 エジプト料理 VS ギリシャ料理

【2005年4月14日配信】
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■『食べ物』シリーズ 其の二
〜エジプト料理 VS ギリシャ料理〜
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●とりあえず、羊の続き…

前回、羊肉の話を書いていたら、いきなり全身の細胞が「羊肉食べたい!」と
叫びだした。すると、何故か救いの神は現れるもので、知人が某ホテルのステ
ーキハウスに連れて行ってくれた。メニューを見たら『オーストラリア産ベビ
ーラムのラムチョップ』という一行が燦然と輝いていた。

知人のオーダーも聞かずに「ワタシ、これ」と口が勝手に言っていた。
失礼な奴だ。
お味の方はといえば、さすがに一流ホテルで、中東のものとは違うけれど大変
おいしくいただいた。フィンガーボウルまで持ってこさせて、骨を未練たらし
くしゃぶる始末である。
失礼な上に行儀まで悪い。困ったものだ。
どうも飲食のことには節操がなくて困る。

赤のハウスワインはニュージーランドのピノ・ノアールで、ボトルを見たら
"Mt. Difficulty"とアラビア書道風の文字で書いてあった。
(映像はこちらでどうぞ: http://www.mtdifficulty.co.nz/index.shtml )
この連載の今後の展開を予告されているような気分になって、ちょっとだけ鼻
の頭に皺が寄ったが、羊に良く合うなかなかおいしいワインだったので、即ニ
コニコとなった。まあ、なるようになるさ、インシャアッラー。

羊肉に合うといえば赤ワインもいいが、何と言っても相性抜群なのはトルコで
「ラク」、湾岸あたり(レバノン産が有名)で「アラク」と呼ばれる酒だ。ブ
ドウの絞り粕から作る蒸留酒で、水を入れると白濁する。独特の癖がある。

イエニ ラク 45度700ml (トルコ)YENI RAKI
【イエニ ラク 45度700ml (トルコ)YENI RAKI】


実は私もトルコに行くまでは「化粧水みたいな匂いのする酒を飲んで何が楽し
い?」と思っていたが、トルコで羊肉と合わせた途端、目からウロコが落ちた。
羊の微妙な癖と実に絶妙に絡むのだ。

まあ、お酒の話は後日まとめる予定なのでこの辺にしておくが、前回書き忘れ
たので一応ご紹介しておく。羊肉には絶対ラクかアラク!

で、本題へ。今回はエジプト料理編。

● エジプト料理 VS ギリシャ料理

中東の料理は、スパイスは確かにいろいろ使うが、基本的に辛くはない。極端
な癖もない。
味付け自体はどこで何を食べても、おおかた日本人の口には合いやすい。

ではエジプトはどうかというと、私の評価は微妙である。
微妙ではあるが、エジプト対ギリシャなら、エジプトが勝ち点1を上げられる、
と思う。ツアーなどでギリシャからエジプトに来るお客さんからは、「エジプ
トに来てやっと食べられるものがあった」「エジプト料理って、おいしいです
ね」という反応がよく出たものだ。

別にギリシャ料理を侮辱しようとは思わないが、なにしろオリーブオイルが何
にでもドバドバかかっているので、日本人の口には合いにくいのだろう。ギリ
シャの庶民的なレストランで、隣のギリシャ人達が立った後のテーブルをみる
と、大きなボウルの三分の一くらいにオリーブオイルが入っていて、拾い切れ
なかった野菜の切れ端がぷかぷか浮いている、という光景にぶつかることがよ
くある。明らかにサラダを食べたあとだ。
オリーブオイルが好きな私も、さすがにここまではやれない。

逆にエジプト料理は、全体に日本人の口には合うようだ。
某旅行代理店のツアー後のアンケートを見たら、平均評定は5段階で3〜4だ
った。「5」まで散見されたのには正直言って驚いた。ここの場合、料理の選
定などには結構気を使っていたこともあるだろうが、エジプト料理というのは
「良く言えば」変に凝っていないので、食べられないほど極端な癖はないので
ある。

もともと「あんなところの食べ物にろくなものがあるはずはない」というネガ
ティブな先入観に固まって、カップラーメン、インスタント味噌汁にレトルト
食品などで厳重武装して渡航する人が多い国なので「おや、意外に・・・」と
いう気持ちになるのかもしれない。

でも、欧州リーグのギリシャと中東のエジプトがぶつかるには(お料理の仮想
トーナメント・リーグ、念のため)、エジプトが中東リーグで勝ち残ることが
前提となる。これははっきり言って、ちょっとばかり厳しいかもしれない。
あと、ギリシャがヨーロッパで勝ち残ってくるチャンスは、さらに限りなく薄
いかと予想される。

●エジプト料理の基本形

エジプトはじめ中東界隈の羊肉が美味しいことは、前回くどいほど書いた。
しかしあれは素材勝負であって、じゃあ、他には・・・というと、例えば煮込
むものならば、チキンをトマトソースで煮込んだもの、ミートボールをトマト
ソースで煮込んだもの、いんげん豆をトマトソースで煮込んだもの、オクラを
トマトソースで煮込んだもの、イカをトマトソースで・・・という、トマトソ
ース系が基本だ。

メインディッシュの料理法は、焼く(マシュウィ)、揚げる(マーリー)、そ
してこの「トマト煮込み」の3パターンが基本となる。
よく言うとシンプルだが、悪く言うと単純で今ひとつ芸がない。

エジプト料理は、元々はトルコ料理の地方版なのだ。また、何が何でも美食を
求める傾向はなく、家庭で母や妻の慣れた手料理を食べていれば幸せ、という
のんびりした国民性もあるだろう。「質より量」という感覚も強い。

一応言っておくが、私は過去、強力な「エジプト料理援護派」だった。
「エジプト料理は決して悪くない。天下無敵の美味とまでは言わないけど、結
構いけるのだ!」と必死で主張していた。次に住んだ国がドイツだったから尚
更である(そう、ここにもエジプトが勝てる国があった。サッカーの実力と違
って、ドイツの食べ物は本当にぱっとしない)。

でもしかし、それはイスタンブルに移住するまでのことだった。
滞在初日にして「う・・・」と唸り、一週間たつころには「エジプト完敗宣言」
を出すにいたる。手の込み方、バラエティーの豊かさ、「食」自体に対する執
着とこだわりなど、全てにおいてトルコはエジプトの上を行っていたのだ。
やっぱり「本家」は「本家」。
さすがはかつて世界を制した、歴史ある王都である。

まったく、こと食べ物になると際限がなくなってくる。
エジプト料理のいろいろは、次回にご紹介することにしよう。

『中東食べ物シリーズ』が、三回で終わるなんて思っていた私は、まるっきり
甘かったと思う。結局、勝手に5回に延長決定として、次回に続く。


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レバノン【レバノン-ACCESS】at 2005年05月15日 05:49
この記事へのコメント
いつもメルマガ楽しく拝読しています。
はじめは「なんで『軍事情報』なのに旅行の話が出てくるのかな?」と正直疑問でしたが、回を重ねるにつれて「これまで中東が中東がっていってきたけど、中東のこと実は何も知らないまま言ってたんだなあ」と感じるようになってきました。
アリーマさんの別冊がはじまって、幅広い視野がひとつのマガジンでGETできるようになったことが何より嬉しいですね。
これからも楽しいお話、お待ちしています。
Posted by 平井 at 2005年04月15日 23:55
回を追うごとに文章がうまくなっておられますね。
特に今回はよかった。
毎回、楽しみに拝見しております。
これからも頑張ってください。

佐藤拝
Posted by 佐藤兼次 at 2005年04月16日 00:00
もっと早くUPしてください!

Posted by 一読者 at 2005年04月16日 00:04
一読者さますみません。m(__)m
来週から早く上げます。

管理人
Posted by 管理人 at 2005年04月16日 00:06
今まであまりレスポンスがなかったので、「やっぱりこんなダラダラぶらぶら話は、軍事情報の読者の皆様にはつまらないのかなぁ、と、さびしく思っておりましたが、皆様、コメントありがとうございます。うれしい限りです。

イスラム圏にいたわりに「『豚』もおだてりゃ木にのぼる」タイプです。
未だ手探り状態ではありますが、皆様のご期待に添えるようがんばります。

あと、管理人さまはアリーマのごちゃごちゃした訂正、エラーなどの回収に大変お忙しく、おんぶにだっこのワタクシとしては申し訳ない次第です。

軍事情報をご購読いただければ、間違いなく発信日にお手元に届きます・・・私の駄文よりはるかにしっかりした(私もアレレというまにコメントを入れたりしてますが)内容ですので、是非ご購読をお願いいたしますです・・・。
Posted by アリーマ at 2005年04月16日 02:52
>どうも飲食のことには節操がなくて困る。

それから、よく覚えていないのですが、食い意地が汚いとかいう表現もあったと思いましたが、こういうことをわざわざ書かなかったら、アリーマさんの食に対してのエネルギッシュさに、もっと気持ちよく引き込まれていたと思いますよ。あー、そうだ、逆に、自慢してください。こういう私だから、面白い情報をいっぱい伝えられるって。卑下する必要がないのに卑下されると、相手は気が滅入るものでしょう?親から変なことをしつけられた名残りなのかな?
 
 内容は、おっ、やっと本領発揮しつつあるな、というところです。ああいうところに女だてらに出かけて行ったことといい、その辺にいる奴とは元々感性も少し違うということでしょうし、そういうことを私は求めていますから。日本人の視点で吟味したあの地域の情報を伝えている、と自覚してください、いい加減に、というところ。
Posted by 周界 at 2005年04月17日 19:20
周界さま
食い意地が張っているのも、飲食に節操がないのも『ごく客観的事実』でありまして、特に卑下しているつもりもありません。気が滅入ったとしたら失礼しました。私の親、特に父親の『飲食に対するエネルギー』というのは完全に娘の私を凌駕しておりました。おかげでどこの世界に行っても食べ物に困りません。
あと、あのあたりに限らず海外の各地に女性が一人で住みつくというのは、昨今は特に珍しいことでもありませんよ。いろいろな人がいるのは確かですし、人それぞれ現地の見方も違うわけですが。私の書くものは『私の視点』で書いたものです。感性が違うかどうかは、皆様の受け取り方次第だと思います。
ともあれ、貴重なコメントをありがとうございます。そのようにとらえる方もおられるのだ、ということを心に留めて、これから次号の原稿書きです。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
Posted by アリーマ at 2005年04月17日 21:43
アリーマ山口さんへ
いつも楽しく連載見てます。
いろんな人がコメント出してますねえ。
一読者として何だか嬉しいです。
で、今回はお礼をいいたくてコメント入れます。
実はこの前の連載で紹介されていた「ラク」を注文しまして、今日届いたんです。
「水を入れると白く濁る」
の一文に惹かれまして・・・。
で、早速やってみたんですけど、これはいいですね。
「羊と一緒だから、化粧水みたいな味だけど合う」
ということも書いておられたので、マトンと一緒に。
おっと、ラクがこぼれかけた、危ない危ない。
すみません。
いままで経験したことのないマトンとこの香りのフィーリングに病み付きになりそうです。
というわけで、つい先ほどラクを追加注文しました。
新たな感動をありがとうございました。

少し酔っているラク
Posted by ラク買いました at 2005年04月17日 22:53
ラク買われましたか。
あれが好きなら、トルコは天国です。
あと、最高級品はレバノン産ですが、残念ながら日本で見たことがありません。

ラクに酔えて、いいですよ・・・って違うか・・・。
Posted by アリーマ at 2005年04月18日 01:32

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