羊肉に合うといえば赤ワインもいいが、何と言っても相性抜群なのはトルコで
「ラク」、湾岸あたり(レバノン産が有名)で「アラク」と呼ばれる酒だ。ブ
ドウの絞り粕から作る蒸留酒で、水を入れると白濁する。独特の癖がある。
実は私もトルコに行くまでは「化粧水みたいな匂いのする酒を飲んで何が楽し
い?」と思っていたが、トルコで羊肉と合わせた途端、目からウロコが落ちた。
羊の微妙な癖と実に絶妙に絡むのだ。
まあ、お酒の話は後日まとめる予定なのでこの辺にしておくが、前回書き忘れ
たので一応ご紹介しておく。羊肉には絶対ラクかアラク!
で、本題へ。今回はエジプト料理編。
● エジプト料理 VS ギリシャ料理
中東の料理は、スパイスは確かにいろいろ使うが、基本的に辛くはない。極端
な癖もない。
味付け自体はどこで何を食べても、おおかた日本人の口には合いやすい。
ではエジプトはどうかというと、私の評価は微妙である。
微妙ではあるが、エジプト対ギリシャなら、エジプトが勝ち点1を上げられる、
と思う。ツアーなどでギリシャからエジプトに来るお客さんからは、「エジプ
トに来てやっと食べられるものがあった」「エジプト料理って、おいしいです
ね」という反応がよく出たものだ。
別にギリシャ料理を侮辱しようとは思わないが、なにしろオリーブオイルが何
にでもドバドバかかっているので、日本人の口には合いにくいのだろう。ギリ
シャの庶民的なレストランで、隣のギリシャ人達が立った後のテーブルをみる
と、大きなボウルの三分の一くらいにオリーブオイルが入っていて、拾い切れ
なかった野菜の切れ端がぷかぷか浮いている、という光景にぶつかることがよ
くある。明らかにサラダを食べたあとだ。
オリーブオイルが好きな私も、さすがにここまではやれない。
逆にエジプト料理は、全体に日本人の口には合うようだ。
某旅行代理店のツアー後のアンケートを見たら、平均評定は5段階で3〜4だ
った。「5」まで散見されたのには正直言って驚いた。ここの場合、料理の選
定などには結構気を使っていたこともあるだろうが、エジプト料理というのは
「良く言えば」変に凝っていないので、食べられないほど極端な癖はないので
ある。
もともと「あんなところの食べ物にろくなものがあるはずはない」というネガ
ティブな先入観に固まって、カップラーメン、インスタント味噌汁にレトルト
食品などで厳重武装して渡航する人が多い国なので「おや、意外に・・・」と
いう気持ちになるのかもしれない。
でも、欧州リーグのギリシャと中東のエジプトがぶつかるには(お料理の仮想
トーナメント・リーグ、念のため)、エジプトが中東リーグで勝ち残ることが
前提となる。これははっきり言って、ちょっとばかり厳しいかもしれない。
あと、ギリシャがヨーロッパで勝ち残ってくるチャンスは、さらに限りなく薄
いかと予想される。
●エジプト料理の基本形
エジプトはじめ中東界隈の羊肉が美味しいことは、前回くどいほど書いた。
しかしあれは素材勝負であって、じゃあ、他には・・・というと、例えば煮込
むものならば、チキンをトマトソースで煮込んだもの、ミートボールをトマト
ソースで煮込んだもの、いんげん豆をトマトソースで煮込んだもの、オクラを
トマトソースで煮込んだもの、イカをトマトソースで・・・という、トマトソ
ース系が基本だ。
メインディッシュの料理法は、焼く(マシュウィ)、揚げる(マーリー)、そ
してこの「トマト煮込み」の3パターンが基本となる。
よく言うとシンプルだが、悪く言うと単純で今ひとつ芸がない。
エジプト料理は、元々はトルコ料理の地方版なのだ。また、何が何でも美食を
求める傾向はなく、家庭で母や妻の慣れた手料理を食べていれば幸せ、という
のんびりした国民性もあるだろう。「質より量」という感覚も強い。
一応言っておくが、私は過去、強力な「エジプト料理援護派」だった。
「エジプト料理は決して悪くない。天下無敵の美味とまでは言わないけど、結
構いけるのだ!」と必死で主張していた。次に住んだ国がドイツだったから尚
更である(そう、ここにもエジプトが勝てる国があった。サッカーの実力と違
って、ドイツの食べ物は本当にぱっとしない)。
でもしかし、それはイスタンブルに移住するまでのことだった。
滞在初日にして「う・・・」と唸り、一週間たつころには「エジプト完敗宣言」
を出すにいたる。手の込み方、バラエティーの豊かさ、「食」自体に対する執
着とこだわりなど、全てにおいてトルコはエジプトの上を行っていたのだ。
やっぱり「本家」は「本家」。
さすがはかつて世界を制した、歴史ある王都である。
まったく、こと食べ物になると際限がなくなってくる。
エジプト料理のいろいろは、次回にご紹介することにしよう。
『中東食べ物シリーズ』が、三回で終わるなんて思っていた私は、まるっきり
甘かったと思う。結局、勝手に5回に延長決定として、次回に続く。
レバノンレバノン共和国(レバノンきょうわこく)、通称レバノンは、西アジア・中東の国。首都はベイルート。シリアの南、イスラエルの北に接し、西は地中海に面している。レバノン共和国الجمهوريّ...
今まであまりレスポンスがなかったので、「やっぱりこんなダラダラぶらぶら話は、軍事情報の読者の皆様にはつまらないのかなぁ、と、さびしく思っておりましたが、皆様、コメントありがとうございます。うれしい限りです。
イスラム圏にいたわりに「『豚』もおだてりゃ木にのぼる」タイプです。
未だ手探り状態ではありますが、皆様のご期待に添えるようがんばります。
あと、管理人さまはアリーマのごちゃごちゃした訂正、エラーなどの回収に大変お忙しく、おんぶにだっこのワタクシとしては申し訳ない次第です。
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