2005年03月24日

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【第3話】 ファラオの復讐 〜水(その2)〜

前回は、現地の水事情を、中東全体をざっと概観する形で御紹介した。

情報があちこちに飛んだので、散漫だったと反省しているが、とりあえず『中
東諸国』といってもいろいろなのだ、というところを少しイメージしていただ
ければよかったかな、と思う。
あと、トルコはヨーロッパとされている。念のため。

分かっている人には申し訳ないが、「大きな声じゃ言えないけど、なんかよく
わからんところだなあ」と思っている読者の皆様で、現地に関心のある方が、
回を重ねるごとに「あの辺もいろいろなのだね。ふんふん」などと漠然と思っ
ていただければ・・・と思っている。
で、後は専門家(本体『軍事情報』)にお任せする、と。

とにかく、アラブだ、中東だといっても、国情や実情は多種多様。十把ひとか
らげにできない。
だって日本と中国と韓国が「同じようなもん」と言われたら「ちょっと待て
!」と言いたくなりましょう。
同じことです。

ちょいと脱線ついでに一例をあげれば、エジプト人は、自分たちが「アラブ
人」だという意識はほとんどない。じゃあアフリカ人か、と言ったら、これは
これで非常に複雑な反応が返ってくる。彼の地にも、肌色による心理的差別が
明らかにあるからだ。

なんと言っても、
男女問わず「肌が白い」ということは美男美女としてポイントが高い。

昔働いていたオフィスで、女性たちに「うちの会社で一番ハンサムなのは?」
とリサーチしたところ、想像を見事に裏切ってイタチ顔で単に色が白いだけの
オトコが群を抜いてトップだったのには唖然としたことがある。

「浅黒い肌」というのは彼の地ではポイントにならないのである。
そりゃあ、大方が「浅黒い」を基点に肌色濃度(?)を高めていくんだからそ
うではあろう。日本が「なんとなく黄色っぽい」を基点にしているのと同じこ
とだ。
「彫りの深い顔」も、ついでに言うと大きな得点にはならない。だってみんな
彫が深くて当たり前だからである。

「背が高い」はまあまあいける。でも「結婚するなら?」と聞いたら、中流か
らそのちょっと上くらいの娘らが集まっているそのオフィスでは、「せぇの」
で一言、「お金持ち!!」だった・・・。
この辺、根本的に彼我の違いは感じないけど、まことに直球ストレートに衒い
ないお答え。そういう意味では清々しかったな・・・。

ああ、また激しく脱線してしまった。ここで「じゃあ男性の見目形が云々」と
いう話題に飛ぶと、私見が怒涛のごとく流入した挙句に「水のお話」がナイル
の果てに消え、地中海の泡と化すので、この話は機会があったらまた、という
ことにしよう。オタノシミニ。


■ファラオの復讐

で、再び水について。
今回はエジプトが基本だが、他の地域にも当てはまることは多いと思う。
ちょっと小姑じみるし、旅行ガイド状態になってしまうが、何かで役に立つこ
ともあると思うのでご忍耐くださいまし。

エジプトなどで水がどうのといえば、必ずくるのが『衛生状態』。

私も平成元年にカイロに居を定めた折、一番気になったのがここだった。
とりあえず迎えにきてくれたスタッフに尋ねたら「僕らは水道水だけど、君ら
はミネラルウォーターを飲みなさいね」との由。
同じ人間が普通に飲んでいるのだから、別にいいじゃないの、と一年ほど生水
で粘ったのは前回書いたとおり。

ただ、昔から「旅先の生水はよろしくない」と日本国内ですら言われているく
らいだ。
旅行中というのは、なにかと疲労がたまりがちだし、普段は平気なちょっとし
た刺激にも敏感に反応しやすくなる。

エジプトの水は日本よりもかなり硬く、水質は当然違うのだから、そこで生水
を飲めば体調を崩すのも無理ないのでは?
まあ、当地の衛生状態が、日本に比べればかなり落ちるのも事実ではある。

この地域でそういう『当たり』を食うと、非常につらい。

胃がキリキリと締め上げられるような痛みに、下痢と嘔吐が続き、高熱まで発
してのたうちまわる。

これをエジプトでは俗に『ファラオの復讐』という。

で、グループを引率する添乗員さんたちは、

「エジプトの野菜は生で食べないでください」
「果物にも手をつけないでください」などということになる。

理由は「水道水で洗っているから」ということだ。

しかし、プールで泳ぐのはOK、顔を洗うのも歯を磨くのも、シャワーを浴びる
のも、お風呂にはいるのもOK。なんだか矛盾したものを感じる。
カイロの水は決して毒物ではない。私が己の体で実証済みなのだ。


■『ファラオの復讐』対策

「生野菜はよろしくない」という意見は、確かに必ずしも間違っていないと思
う。ただ、理由は「現地の水で洗っているから」ではない。

胃腸が弱っている時に消化の悪いものは良くないし、生野菜自体、日本で食べ
たって体が冷えるものだ。でも、それをエジプトの水のせいにするのは違うと
思う。

まあ、蝿がブンブン飛ぶような一般のレストランは問題外として、特にカイロ
市内の一流といわれるホテルは(ホテルにもよるが)、きちんと浄化槽を通し
た水で野菜を洗っている。

先にも書いたが、
水が変わると、体調が程度の差はあれ狂うのは、日本国内でも海外でも同じこ
とだ。旅行となればストレスや疲れ、慣れない食事など、抵抗力が落ちて体調
が狂う要素は山のようにある。
だから、普段は影響のない些細な刺激にも体が敏感に反応してしまう。

故に用心が必要になるわけだ。

逆にエジプト人のビジネスマンが日本のホテルで生水を飲んで、ファラオの復
讐状態で寝込むこともある。私もたまに日本に戻って生水を飲むと、数日はな
んだか調子がおかしかったものだ。

カイロで生水生活だった私が、である。

結局のところ、本人の健康状態と自己管理次第なのだ、と思う。
まあ、ファラオの怒りに触れてしまったらどうにもならないけど、ある程度予
防線は張れる。絶対にとはいえぬまでも、かなり効果あり。お試しあれ。

1.出発前は、できることならなるべく休む(無理ならばやむをえないけれど)
1.冷たいミネラルウォーターをガブガブ飲まない。
1.ビュッフェはあくまで腹八分目。過食厳禁。
1.おかしいと思ったら、現地の医者にかかる。正露丸で何日かごまかすと余
  計ひどいことになる。ただし、アレルギーや病気など、元々体に不安のあ
  る人は主治医に必ず指示をもらってから行くこと。
1.観光目的であれば、できることなら、なるべく旅程の緩やかなツアーに参
  加すること。
1.当たってしまったら、悲観せず「これもファラオの愛の証なのだ」とポジ
  ティブに捉えること。そう思えば少しは痛みも和らぐ。

一週間以上の休暇をとる大人たちというのは、「必ず」出発前に無理をしてい
るものだ。

仕事をしている人であれ、家庭にいる奥方であれ、留守中の諸手配で相当神経
が磨り減っていて、前夜たっぷり眠ってくる人はきっと少数派だろうと思う。

で、長距離の飛行機移動。
余程の剛の者でない限り、ここで完全に熟睡して、出発前から蓄積した疲労を
解消できるものではない。

そこで、刺激の強い異文化環境にやってくる。
テンションがあがって、当然普段働くストッパーは働かなくなる。

そこで待ち受けているのが、おそらくたいていのツアーで出てくる『ビュッフ
ェ』の食事。これが一番危険だ。
何故かって、日本人は『ビュッフェ』→『バイキング』→『食べ放題』→『思
いっきり食べなきゃ損』という脊髄反射的な行動に出ることが多いからだ。

しかも、見た目にもおいしそうな食べ放題の食事は、実は日本と違って恐ろし
く大量の油を使っている。裏の厨房で見ていたワタクシ本人が「ひゃぁ!」と
叫んだことがあるのだから、間違いない。
(欧米系人種はまったく普通に食べている。やはり根本的に体のつくりと普段
の食生活が違うのであろう)。

当然、そういったものを過食すれば胃にもたれる。

一日一回ならばまだ良い。
朝食のビュッフェは、ついひと回り全部食べてしまい、昼もきちんと食べて、
夜のビュッフェで思いっきり食べまくる・・・・・要は毎日ハイカロリー油脂
まみれの食べ放題。胃がおかしくならないほうがおかしいのだ。

見事に小姑くさい話になってしまうけれど、ビュッフェというのは、本来「食
べ放題」ではなくて「フリースタイルのフルコース」だと思う。
よく見れば、コールドの前菜、ホットの前菜、スープ、メインディッシュ、デ
ザートと別々に並んでいて、それぞれのコーナーにお皿が置いてある。

「一回づつ取りにきてね」ということだ。

まあ、本来がカジュアルなスタイルだからどんな食べ方をしようとかまわない
のだけれど、実はこのようにゆっくり考えながら食べるのが一番安全なのでも
ある。まずエレガントに見えるし、そのようにゆっくり食べるうちに過食が避
けられるという一石二鳥。お奨めである。

それにこういうビュッフェは、日本の「食べ放題バイキング」と違って時間制
限はない。無くなっても、原則として次がスタンバイしているから、待ってい
れば来る。「早く出してよ」とウェイターに催促すれば、若干なりとそれがス
ピードアップし、ちょいとチップでも出せば倍速になることであろう。
(インシャアッラー)

日中のツアーで移動中などということでなく、時間的に余裕があるのならば、
まず一回りして、何をどのくらい食べようか考える。
で、それぞれを一回ずつとりに行く。できたら、自分で食べられると思うより
少し少なめに取るといい。

なぜかビュッフェというのは、ついつい「目で食べて」しまう。
気に入ったらもう一度取りにくればよいことだ。

それでも、ついつい取りすぎてしまうことはある。
その場合は、実際のところエチケット違反ではあるけれど、通常のバランス感
覚を失っている我が身を労わるために、きっぱり残してしまうことだ。明日も
元気で過ごすために。

と、決心を固めて立ち上がったところで、大皿をパスタ山盛りにしてニコニコ
と歩いてくるドイツ系観光客とすれ違ったりする・・・

ここで「よぉし!」などと気合を入れなおしてはいけません。
だめです、だめ!!

人種が違う。日常生活が違う。体のつくりが違う。
欧米系人種との勝負はほかの分野で、またの機会で、ということにしよう。
彼らは、一般に、日本で高級懐石のコースを瞬く間に食べ尽くした後「で、食
事はいつ始まるんだ?」と思う人々なのである。

実際私は、昔一緒に日本出張で同行した欧米系グループが、こうした『高級和
食の宴』のあと、コソコソ連れだって、ホテルの近所のマクドナルドに入って
いったのを見たことがある・・・。

さて、話はエジプトに戻って、その翌日以降。

外に出て観光や仕事をする。
たいてい乾燥していて、冬を除けば暑い。時期によっては「熱い」といってよ
いほどだ。

乾燥して気温の高いエジプトのような国では、水分補給は基本中の基本だ。
ただ「冷え切った水の一気のみ」だけは、心がけて控えてほしい。
つまらないだろうけれど、ぬるい水をしょっちゅうちびちび飲むのが正解。
冷たい水しかなければ、とにかくチビチビチビチビと、ゆっくり噛むように飲
む。

そして、しつこいようだが「飲料水は絶対にミネラルウォーター」だ。

「現地に行ったら絶対に現地の水で生活するのだ!」というような奇特な生活
哲学のある方は別で、自分もそうだっただけに決して否定しないが、短期間の
滞在であれば寝込む時間がもったいないし、前回も書いたが、現地の水はまず
い。

水は1.5リッター入りのペットボトルが、高級ホテルでも一本50円程度で売っ
ている(注:値段は変動するので参考価格)。

特に「熱い」時期は、思いっきりキンキンに冷えたミネラルウォーター一気飲
みの衝動に駆られる・・・・・・あーあ。
ただでさえ弱りきって、しかも慣れぬ油脂にまみれている胃腸に、冷たい水を
ぶっ掛けたらどうなるか、想像してみてほしい。

「ミネラルウォーターならどんな飲み方をしても良い」というものではないの
だ。

これは極私的見解として聞き流してほしいが、
「冷たい水より冷たいビールのほうが体にいい!」と私は思っている。
陰でこっそり「そうだそうだ」といっている者も多い。

ただし、一般的にはこれは「単なる自己正当化」なのだそうである。
現地のお酒の話は、まあ確かに水関係だけど、これはもうきりなく続いて即時
連載打ち切りを宣言されかねないから、また回を改めて・・・。

あと、一度口をつけた水のボトルは、賞味期限一日と考えるのが、体がばてき
った旅行者には妥当。一度封を切って、しかも口をつけたボトルは、特に暑い
時期バクテリアが繁殖しやすくなるからだ。
勿体無ければ、これこそ歯を磨くなり、髪のすすぎに使うなりしてはいかが?

本連載得意の余談だが(すでにもう開き直っている)、敢えて「髪」というの
は、当地の水は硬いので日本の水になれた髪がすぐごわごわになるからだ。
男性はともかく、当地にくる女性の必需品は「シャンプーとリンス、コンディ
ショナー」の類。
現地調達できるのは、現地の水対応の現地の人向けのもの。

私もこれには苦労した。
日本人の髪にはやはり日本製のものが一番合う。当時はかなり髪を伸ばしてい
たので余計大変だった。

だから、
ガイド時代、お客さんが「使いかけで申し訳ないですが・・・」などと置いて
いってくださるシャンプーやリンスは本当にありがたかった。
髪質などはかまわない。現地の日本人女性ガイド同士でバーターするから問題
ないのだ。当時の話だけれども。


■ファラオの愛の証について

さて、それでも、どうしてもファラオの怒りに触れてしまった場合、
原則として日本の中途半端な薬でごまかしてこじらせる前に、ホテルなどでお
医者さんを呼んでもらうこと。正露丸など、ファラオの怒りを煽るのみだ。

できれば、出発前にそういう事態を想定して、どういう薬をどのように処方し
てもらうか、主治医がいる方は聞いておくのが良いと思う。
エジプトの一流ホテルであれば、ドクターは24時間スタンバイして、30分以内
に(インシャアッラー)駆けつけてくる。

そして、彼らの仕事は大半が「ファラオの復讐に悶え苦しむ外人観光客の手当
て」なので、見立ても処置もプロである。
そういう処置は、早いほど事態は早く楽に収まる。
日本人の場合、立派な精神ではあるが、限界まで我慢してしまうのである。

また、脱水症状が進むので、水分を少しづつでも補給すること。
これこそ、本当にちびちびと。だから、薄いお茶などは良い。

エジプトでお腹不調の特効薬はミントティー。
現地語で「シャイ・ビ・ナァナァ」という。
「なぁなぁ」といえば、お腹にいい薬草が出てくるわけだ(本当ですってば)。
尚、「シャイ」は「お茶」。「ナァナァ」がミント。
胃がさっぱりする。脂っこい食事の後にも口がさっぱりしていい。

かく言う私は、10年以上この国を起点に海外生活をしたが、半年以上エジプト
を離れていて、再定住して一ヶ月ほど経つと、必ずこの『ウェルカム攻撃』に
やられて苦しんだものだ。

一方で、8年住んでいて、きっぱりファラオに無視され続けた我が連れ合いの
ような人種も少なからずいる。
「あなたはファラオに愛されていないのよ」と、言ったものだった。

そう、私はこの『当たり』を『ファラオの復讐』とは呼ばない。
紛れもなくこれは『愛の証』と思っている。

そう、確かに、痛い辛い苦しい思いは誰でもいやだけれど、『当たり』がきた
ら、これはあなたがファラオに愛された証、とポジティブに捉えたいものだ。
愛憎は背中あわせ。何事も。そして、愛とは時に辛く苦しいものなのである・
・・(くくく)。

たかが水、されど水、マァ、マイァといいつつ、マァイイヤとは言い切れぬ中
東の現状ではある。

おあとがよろしいようで・・・。

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